研究課題
これまでヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染細胞におけるHTLV-1プロウイルスの転写制御メカニズムと、HTLV-1とその関連疾患との因果関係を明らかにするために研究を行ってきた。現在、非症候性HTLV-1キャリアとHTLV-1感染により発症するHTLV-1関連脊髄症(HAM)、成人T細胞白血病-リンパ腫(ATL)患者の末梢血単核球(PBMC)検体を用いて、クロマチン免疫沈降法と次世代シークエンサー(ChIP-seq)を使ったプロウイルスのエピジェネティクス解析を行っている。今回の渡英で、共同研究者であるBangham教授と話し合いを行い、凍結保存されているPBMCの中から、適切な患者サンプルの選択とDNA抽出を行った。そして、日本で行っている同様の手法が正しく働くことを確認するために、細胞株を用いて転写開始点マーカー、サイレンシングマーカー、転写伸長マーカー、エンハンサーマーカー、インスレーターの抗体を用いたクロマチン免疫沈降法、そしてプローブを用いたHTLV-1プロウイルスのエンリッチメントを行った。ATL細胞株でHTLV-1プロウイルス全長のヒストン修飾パターンを観察し、転写活性に関わるH3K4me3、H3K9ac、H2A.Zのヒストン修飾は5’LTR側では少なく、3’LTRでは多くみられ、またインスレーターの構成要素であるCTCFがその境界で確認された。今後は、患者のPBMC検体を用いてChIP-seqを行い、キャリアと各疾患におけるHTLV-1プロウイルスの転写制御パターンを明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
本年度は3月より開始のため、1か月間の研究進捗状況となる。昨年より渡英していたためすぐに研究を開始し、以前より所有している試薬を使用した。まず、日本と同様の実験を行うことが可能かどうかを確認するために予備実験を行った。
非症候性HTLV-1キャリアとHTLV-1感染により発症するHAM、ATL患者のPBMC検体を用いて、ChIP-seqを使ったプロウイルスのエピジェネティクス解析を行っていく。また、研究の幅を広げ、HTLV-1プロウイルスの転写制御と関連疾患の発症メカニズムをより詳細に解析するためにRNA-seqを行う。以前我々が報告したプローブを用いたエンリッチ法をRNAに応用して、HTLV-1プロウイルスのトランスクリプトームをより高感度に観察することが可能となる(Miyazato P, Sci Rep, 2016)。これを用いて、HTLV-1の転写制御パターンのみならず、トランスクリプトームをキャリアとHAM、ATL患者で比較し、これらの疾患の発症メカニズムとの関連を明らかにする。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
Blood
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Journal of Clinical and Experimental Hematopathology