研究課題
チタンインプラントと周囲骨の界面バイオメカニクスは,再生骨質の向上と表面の微細構造化によって向上できると考えられている.これは多孔質化・粗造化されたチタン表面への新生骨の侵入により界面がハイブリッド化され,せん断応力の分散化がチタン‐生体界面での応力遮断効果を抑制するためである.チタンの多孔質化にはマイクロビーズをインプラント表面で焼結したものが報告されている.放電陽極酸化処理では電解液の導電性と処理条件により,チタンの微細構造をマイクロスケールでコントロールすることが可能となった.放電陽極酸化による表面微細構造は母材のチタンから傾斜的であり,物理的強度の観点から有利である.マイクロスケールで改質された表面は,再生骨組織との接触面積の増大から優れた界面バイオメカニクス・応力遮断効果の抑制が期待できる.また本研究から放電陽極酸化処理はチタン‐ジルコニウム合金に用いた場合,表面が完全にチタン陽極酸化膜で被覆され,力学的特性に優れた石灰化組織の形成とインプラント物理的強度を両立することが示唆された.一方,チタンインプラント埋入手術時に採取した顎骨の力学的特性と,血中のペントシジン濃度との相関関係が明らかとなり,今後のインプラント治療における術前診断の一助になる可能性が見いだされた.研究実施期間全体を通じ,硬組織の力学的特性評価方法と拡張型有限要素解析を用いた破壊特性のシミュレーション法を確立することができた.
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