認知症の情動認知評価法の開発とデフォルトモード脳機能・分子イメージング研究の融合に関連して、2019年にオーストラリア・モナシュ大学を訪問し、認知症早期発見のバイオマーカーとして注目されているデフォルトモード・ネットワークの機能的結合解析を中心に学んだ。共同研究体制を構築し、同年10月の訪問時には、MRI解析の前処理を含め最新の解析手法を深く学ぶことができ有意義な訪問となった。2019年7月から9月までの3か月間は、フランス・エクス=マルセイユ大学、ラ・ティモンヌ研究所で情動認知の脳機能画像研究に関して、多変量パターン解析を用いた情動認知時の脳賦活部位の推定法について学ぶことができた。さらに、聴覚情動認知時の認知機能検査の開発についても議論することができ非常に実りのある訪問となった。また、同様の解析手法を用いて抗不安薬や抗うつ薬の薬理学的機能的MRIの解析にも取り組むことができ臨床に役立つ解析手法を学ぶ良い機会となった。2019年11月からの3カ月間は、スウェーデン・ゴッテンブルグ大学にて認知症のタウ・イメージングの解析とドパミン・トランスポータのPET解析及び安静時機能的MRIによる認知機能解析との関連解析の手法に関して議論することができ、大変充実した訪問となった。 上記の訪問を踏まえ、2020年度には、安静時機能的MRIを用いた脳機能画像解析や、情動認知時の脳機能画像解析を中心に取り組んだ。 2021、2022年度は、イギリス・グラスゴー大学で撮像された表情動画を用いて顔の表情認知時の評価スケールの開発に取り組んだ。 また、アミロイドの脳内蓄積やタウタンパクのリン酸化の脳内分布と脳内認知機能の変化に関連した研究の重要性について日本語の総説にまとめた。 これらの解析や研究内容をいかし、認知症の情動認知に関連した脳機能画像研究に関する成果をさらにすすめていきたいと考えている。
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