研究課題/領域番号 |
16KT0012
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
新村 健 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70206332)
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研究分担者 |
永井 宏達 兵庫医療大学, リハビリテーション学部, 講師 (00633348)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | フレイル / サルコペニア / バイオマーカー / 生活習慣 / 口腔機能 / 骨粗鬆症 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は,長寿先進国である日本において,とりわけ高齢化の進行した農村部在住高齢者のおけるQOLに資する要因を、身体的領域,心理的領域,社会的関係,環境領域(経済,住環境)、医学的領域(医療,介護)から学際的に検討することである。特に本研究では、兵庫県丹波圏域在住の自立した高齢者コホートにおいて、フレイルの発症要因やフレイルを構成する各要素のスペクトラム、生活習慣のフレイルに及ぼすインパクト、さらにフレイルの診断に有用なバイオマーカーを明らかにすることを研究の目的としている。これまでに述べ844名(うち4名は重複受診、男性272名、女性 572名)が本コホート研究に参加した。すでに受診者の初回調査時基本テータの解析から、①サルコペニア各指標は血液検査で測定した血清クレアチニン/シスタチンC比と正の相関を示し、腎機能の比較的保たれた高齢者において血清クレアチニン/シスタチンC比はサルコペニア予測のバイオマーカーになる可能性があること、②身体能力と歯数・咬合力との間及び身体活動度と歯数の間には正の相関があり、高齢者の身体機能維持には口腔機能が密接に関連する可能性が高いこと、を見出し論文化した。さらにBDHQを用いた食生活とフレイルとの関連、超音波検査による骨質評価とフレイル、サルコペニアとの関係に関しても現在論文投稿中、準備中である。一方、循環血液中のmiRNA解析によるフレイル、サルコペニアの新規バイオマーカー検索に関する研究は、研究に遅れが生じ、候補miRNA選定の点から再考が必要な状況にある。平成30年度は、研究コホートを1,000名に増やすことを目標に、フレイルのリスクの高い75歳以上の後期高齢者に限定して新規調査参加者を200名程度リクルートし、同時に平成28年度の調査参加者476名に対する初回調査後2年時点でのフォローアップ調査を実施していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コホート研究への参加者はすでに840名に達し、全般的にはほぼ順調に研究は進行している。一方、平成28年度、循環血液中のmiRNAシーケンス解析をExiqon社に委託したところ、RNA抽出・解析を失敗され、貴重なサンプルを失った。再度保存していた同一症例のサンプルを郵送し、再解析をさせた。2回目は無事結果を得たが、大幅な実験計画の遅れとなった。平成29年度はmiRNAシーケンス解析結果をもとに、バイオマーカー候補となるmiRNA群からなるカスタムメイドのプレートを作成し、新規サンプルを用いたリアルタイムPCR解析をタカラバイオと業務委託し行った。解析自体は無事終了したが、初年度の解析結果との一致率が低く、現在その原因を検索している。以上の経過により、一部の研究計画は当初の予定より遅れた状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、研究コホートを1,000名に増やすことを目標に、フレイルのリスクの高い75歳以上の後期高齢者に限定して新規調査参加者を200名程度リクルートし、同時に平成28年度の調査参加者476名に対する初回調査後2年時点でのフォローアップ調査を実施していく予定である。特に2回目の調査への参加率を高め、高い追跡率を達成することで、フレイル、サルコペニア発症に関与する生活習慣の解析精度を上げていきたい。腎機能マーカー(血清クレアチニン/シスタチンC比)のサルコペニアにおけるバイオマーカーとしての意義はほぼ確立しつつある。この点はコホート集団の基本情報解析を進め、第2報として平成30年度中に報告したい。miRNA解析に関しては、miRNAシーケンス解析の結果とリアルタイムPCR解析の結果との乖離が、サンプルからのRNA抽出方法の相違によるものか、解析に用いたサンプルの違い、すなわち個体差の影響かをまず明らかにした上で、平成30年度のコホート研究参加者からのサンプルを用いた追加解析を実施し、フレイル、サルコペニアにおけるmiRNAのバイオマーカーとしての可能性を検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度のExiqon社のmiRNAシーケンス解析の失敗により、研究計画の遅れが出ている。さらに平成29年度に実施したqPCR解析と平成28年度のmiRNAシーケンス解析との間に結果の乖離が見られているために、その原因検索を行うことを優先すべきと考え、追加サンプルを用いたqPCR解析を平成29年度は見送ったため、その予算分の金額が、次年度使用額として残った。この次年度使用額は、結果の乖離を解明するために、miRNAシーケンス解析に用いたサンプルの残余検体を用いたqPCR解析実施のための費用に使用する予定である。
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