研究課題/領域番号 |
16KT0014
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
斎藤 民 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年社会科学研究部, 室長 (80323608)
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研究分担者 |
村田 千代栄 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年社会科学研究部, 室長 (40402250)
櫻井 孝 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, もの忘れセンター, センター長 (50335444)
荒井 秀典 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 副院長 (60232021)
石原 眞澄 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 老年社会科学研究部, 研究員 (70759597)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | 認知症 / 社会参加 / 幸福感 / サクセスフルエイジング |
研究実績の概要 |
平成29年度は文献レビューとヒアリングを通じて、認知症者におけるサクセスフルエイジングや社会参加の意義、評価指標について検討するとともに、実際の成功事例を収集しその特徴を検討した。また大規模データの解析を通じて、認知症ハイリスク者の発症抑制に有効な可能性のある社会とのつながり方の特徴をリスクの低い高齢者との比較から明らかにしたほか、縦断データ構築準備を行った。 1)認知症者におけるサクセスフルエイジングや生活の質(QOL)、社会的健康と社会参加に関する文献レビューを行った。その結果、これらに共通して認知症者の社会参加として「自律性」「適応」「有意味な活動と社会との接触」の重要性が示されていた。さらに認知症当事者の社会参加をキーワードとする活動を収集した結果、いずれも認知症者の残存機能に着目する活動であり、生産的活動(特に前期高齢者層では就労や社会貢献活動)を通じた他者との関わり、生活者として行う活動であること、ユーモアの重要性が挙げられていた。 2) 文献レビューから、軽度認知症者の幸福感やQOL、抑うつ等については、既存の尺度による測定がある程度可能な可能性が示唆された。またこれらの指標が特にMCIや軽度認知症者において不良である可能性も示されていた。 3)日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクトの10年間コホートデータを用いた解析から、主観的認知障害のある高齢者の認知症発症に対して「友人との接触」が保護的効果を持つ可能性が示唆された。成果を国際誌で報告した。 4) その他、認知症者約8000名の予後を検討するための縦断データ構築方法についての検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は文献レビューやヒアリングを通じて、認知症者におけるサクセスフルエイジングや社会参加の意義、評価指標について検討するとともに、実際の成功事例の特徴を検討することができた。また大規模データの解析から認知症ハイリスク者に有効な可能性のある社会との関わり方について国際誌や国際学会で報告した。一方、今年度は認知症者の社会参加とその予後を解析するための縦断データ構築作業を行う予定であったが、完成にはいたらなかった。認知症当事者や家族へのヒアリングとともに平成30年度に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
認知症者の予後を検討するための縦断データ構築準備作業については着実に進捗しており、すでに研究体制や具体的な構築方法の検討について話し合いを行っている。そのため研究期間中の実現可能性は高いと考えられる。来年度早期に倫理審査等の研究手続きを進め、研究補助者の雇用や作業委託等を効率的に行いながらデータセットの完成および分析作業を行う。認知症当事者や家族へのヒアリングについても同様に、対象者の権利擁護に努めながら研究手続きを進める。必要に応じて外部研究者からの助言も得ながら進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費用の多くは縦断データ構築および分析作業に係る人件費や調査委託代と見積もっている。今年度は縦断データ構築作業が遅れたことにより、次年度使用額が生じた。平成30年度に縦断データ構築に係る研究謝金、調査委託代、データセット突合作業・データクリーニング・資料収集・解析補助のための人件費、また成果報告のための旅費として使用予定である。
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