研究課題
本研究では、社会科学的視点と医学的視点の融合から、認知症者やその家族の生活の質を高めるあり方を検討するための基盤となるエビデンス形成を図ることを目的とした。具体的には、以下の3点を実施した。1) 既存の縦断的観察データや新規に構築したデータの解析から、認知症ハイリスク者あるいは認知症者を多く含む集団を対象に社会活動参加やそれを包含する社会関係について把握すること、2) 社会関係と認知症発症、死亡などの予後との関連を把握すること、3) 主観的幸福感の視座から、認知症者において測定可能な評価尺度を検討することである。日本老年学的評価研究(JAGES)が2003年に実施した調査に約10年間のその後の認知症発症状況を突合したデータセットの解析を進めるとともに、国立長寿医療研究センターもの忘れ外来受診者のその後の死亡状況を突合するデータセットの構築を行い、解析を実施した。その結果、全体として、認知症者や認知症ハイリスク者の社会との関わりは乏しいものの、内容によっては維持しやすい関わりがあること、社会活動参加や友人との接触が認知症発症や死亡のリスクを軽減することが示唆された。他方、社会参加と幸福感の視座から、本研究では孤独感尺度に着目し、日本語短縮版について地域在住高齢者を対象とする検証を行った。得られた尺度について認知症患者を対象に測定した結果、困難なく測定できることを確認した。今後は引き続き認知症発症後の社会参加のあり方やその効果検証を進めていくとともに、今回開発した指標を用いて認知症者の社会参加や幸福感といった社会科学的視点から研究を推進する予定である。
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