研究課題
我々は、必要に応じて機能分化し、外部の環境に即時適応するシステムの数理構造の解明を目指している。その具体例として、アリが巣仲間以外のアリと遭遇すると、反射的に攻撃行動に出るような即時適応のメカニズムについて考察した。アリの嗅覚は、一つのユニットが100本の神経細胞の束によって構成されており、それらの神経細胞の間に散見される瘤によって電気的相互作用が生じている可能性があるとの知見を得ている。その効果により外部からの小さな刺激はより弱い情報に変換され、通常とは異なる刺激パターンは強い情報に変換される状況が実現できれば意思決定を迅速に行えるようになる。この様な即時適応に必要な情報の二値化を強化するような数理モデルの構築に取り組み、ケーブル理論に基づきある常微分方程式系を考案し、その数値シミュレーションを行った。パラメータを上手く調整することで、上述のような機能を持つ数理モデルを得ることができた。ただし、入力信号は定常状態にあるものとして取り扱ったが、アリの匂いは複数の炭素化合物が混合されたもので構成されており、また、各神経細胞の受容器は複数の炭素化合物に反応してしまうため、より現実に即した状況に近づけるためには動的な入力信号を扱う必要がある。そこで、こうした点を考慮した数理モデルを新たに構築した。一方で、ヒトの即時適応のメカニズムを考察するために、より長い時間スケールでのシステムを記述するものとしてルールダイナミクスに着目した。このダイナミクスおける制御ではルールがメタルールを通して評価されることで、ルール自身が時間発展することに特徴があり、準安定状態からの遷移を表現することも可能である。この考察と、ヒトと同様に感覚受容器からの情報をフィードバックすることが可能なロボットアームを組合わせることにより、外部の環境に即時適応するシステムの数理構造を追究できると考えている。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
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