研究課題/領域番号 |
16KT0022
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
二宮 広和 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (90251610)
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研究分担者 |
稲垣 正司 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80359273)
上山 大信 武蔵野大学, 工学部, 教授 (20304389)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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キーワード | 数理医学 / パターンダイナミクス / 特異摂動法 / 反応拡散系 / 自由境界問題 / 外部問題 / 心室細動 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,不整脈や除細動のメカニズム解明のための数学基盤を整備することを目的として,(1)非一様興奮場の伝播現象を取り扱う数学的基盤整備,(2)除細動メカニズム解明のための数学的基盤整備,(3)除細動,カテーテル・アブレーション等の臨床医学への応用についての研究を行っている.昨年度の研究において,フィッツフー・南雲型の反応拡散系の特異極限より得られる自由境界問題を導出し,1次元空間の場合に,この自由境界問題の古典解,弱解の定義を与え,初期値に制限を加えることで適切な問題になることを示し,更にその大域的存在および大域的挙動を示した.今年度は,この結果を論文にまとめて投稿するに至った.また,障害物のある2次元外部領域への拡張の可能性を調べている.一方.2次元外部領域上のフィッツフー・南雲型反応拡散系の複数波による伝播現象において障害物の影響について研究を始め,数値計算からいくつかの結果を得た.更に,3次元障害物の影響を考えるためには,問題の単純化が必要であり,多層界面方程式による解析手法を開発し,論文にまとめているところである. 心筋梗塞を起こすと,部分壊死(ミクロな周期的非一様性)が起きている部位(マクロな障害物)がある状態になる.これは心筋梗塞巣と呼ばれる.国立循環器病研究センター倫理委員会の審査を受け,承認されたことにより,2013年から2017年までの診療録から,実際の生体データが利用できる環境が整い,現在,解析を始めたところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度9月から2019年度8月まで在外研究のため,海外の研究機関を訪問していたため,いくつかの研究に遅れが生じた. フィッツフー・南雲方程式の特異極限問題の弱解の定義を1次元空間の場合に与えた.更に,この弱解の大域的存在を示した.この研究は,論文にまとめ投稿するに至った.現在は,この特異極限問題の弱解を2次元空間において考察できるように研究を進めている. 周期的障害物がある場合の伝播現象については,連携研究者・俣野と研究を始めたが,まだ論文をまとめるには至っていない.期外収縮や複数波の場合について,数値計算を行い始めた.これにより,単一波では見られない現象が起きることが分かってきた.現在,そのメカニズムを解析しているところである. 心室内の瘢痕組織の形状と心室細動の発症の関係を明らかとするため,国立循環器病研究センター倫理委員会の承認を受けて,国立循環器病研究センターを2000年から2022年までに受診する患者を対象として,陳旧性心筋梗塞または特発性心筋症で心室細動を合併した患者のMRI画像を収集している.本年度は,2013年から2017年に陳旧性心筋梗塞または特発性心筋症で心室細動を合併して国立循環器病研究センターを受診した全ての患者について,MRI画像を調査した.陳旧性心筋梗塞または特発性心筋症で心室細動を合併した9例のMRI画像を得ることができた.また,比較資料として,同時期に国立循環器病研究センターを受診し,陳旧性心筋梗塞または特発性心筋症で持続性心室頻拍を合併した13例のMRI画像を抽出した. なお,除細動メカニズム解明に向けて,バイドメインモデルやEchebarria-Karmaモデルについて調べているところである.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって得られたフィッツフー・南雲型の反応拡散系の特異極限問題は,一般の初期値に関しては適切な問題ではないが,1次元空間の場合は,弱解の定義や大域的挙動まで解決したので,これを多次元空間に拡張していく.これにより,多次元障害物の幾何形状と自発的なスパイラル形成の関係を調べることが可能になると考えられる. 複数の障害物がある場合の研究として,“周期的”環境下における伝播現象を,連携研究者・俣野と障害物の形状によりどのように変化するか調べており,いくつかの結果を得ている.まずはこの研究を論文にまとめていく. 心筋梗塞を起こすと,部分壊死(ミクロな周期的非一様性)が起きている部位(マクロな障害物)がある状態になる.これは心筋梗塞巣と呼ばれる.MRI画像をもとに,その形状についての情報を集め,その中から何か一定の性質を導き出す予定である.理論的な結果とと生体データの関係を調べていく.また,複数波の影響や期外収縮の影響についての研究も進めていく. なお,除細動メカニズム解明に向けて,バイドメインモデルやEchebarria-Karmaモデルの簡略モデルの導出を行い,メカニズム解明を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度に採用を計画していたポストドクターの任用が1年遅れたこと,および研究代表者が2017年度9月から2018年度8月まで海外の研究機関を訪問していたことにより,いくつかの研究に遅れが生じ,2019年度に実施することとした.
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