研究課題/領域番号 |
16KT0023
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
小川 知之 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (80211811)
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研究分担者 |
宮路 智行 明治大学, 研究・知財戦略機構, 特任講師 (20613342)
坂元 孝志 明治大学, 理工学部, 専任講師 (30546891)
中西 周次 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 教授 (40333447)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | 連鎖反応理論 / 均質化法 |
研究実績の概要 |
白金などの希少金属はあたかも自己組織的に電子移動を促進しそれによって高効率にエネルギーを得ることができるが、現状の電気化学理論はこれを理解するに至っていない。一方、生物はこうした希少金属を使わずして高効率なエネルギー変換を実現している。本研究課題では、合成分子から多電子移動性を示す触媒開発を目指す実験解析と非線形ダイナミクス理論の相互研究により、現象論的モデルを導きだし最終的に自己組織的連鎖反応を理解することを目指す。またその足がかりとなる数学的な準備を進める。連鎖反応の各過程に生成物からのフィードバックを仮定したTributsch-Pohlmannモデル(T-P理論)は多電子移動を説明し得る現象論モデルの卵と考えられている。多電子移動型電極触媒の解析を(1)ミクロ-メソ、(2)メソ-マクロに分ける。(1)における電子移動はT-P理論を用いて解釈し、(2)は均質化法により近似を行い、トータルとしてミクロからマクロを繋ぎ、実験結果との照合を経て数理モデルの構築を行う予定である。もし実験と数理モデルの検証に不整合があるならば、T-P理論における作業仮説であった相変数の非線形性、フィードバックパラメーターなどの見直しをはかる。数学の専門家である研究代表者:小川、研究分担者:宮路が、電気化学実験の専門家の研究分担者:中西と本研究課題に共同してアタックするため、初年度は、主に数理モデル解析のための準備を行った。超電導に対するGinzburg-Landau理論の類推から,T-P理論から得られる数理モデルがある種の反応拡散系になることを想定して、その数値シミュレーション、分岐解析、空間的パターンの制御などに関して進展があった。具体的には、大域フィードバックを持つ反応拡散系や修正されたBenney方程式の進行波解の分岐解析などである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多電子移動を説明し得る現象論モデルのTributsch-Pohlmannモデルから得られる非線形拡散方程式に一種の進行パルスが現われる、またそれが自己組織的連鎖反応に密接に関連することを期待している。まだ直接そこに踏み込めていないものの、進行波の安定性に関する解析方法を開発している。進行波解の固有値の集積問題などの数学的な取り扱い、進行波解のトーラス分岐の追跡法を確立し、これを修正されたBenney方程式に応用し、短形進行波解のさざ波解の分岐を示した。また反応拡散系の大域フィードバック制御をより幅広いものに改良し、定在波が現れる倍周期分岐を見つけた。
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今後の研究の推進方策 |
電気化学実験との検証をシステマティックに行うのは本研究課題の規模を超えるので、本研究課題はその準備段階の研究と位置付けているものの、初年度は中西との研究ディスカッションに十分な時間が割けなかった。そのため、T-P理論そのものの数学解析にはまだ踏み込めていない。そこで、次年度は新たにポスドク研究員を雇用しプロジェクトに参画してもらい、スタディーグループを形成しT-P理論をもう一度初めからレビューして、電気化学実験との融合研究の強固な土台づくりを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
均質化法によるマクロモデル導出に、明治大学研究員のE.Ijioma君を本研究の研究推進員になってもらい進める予定であったが、Ijioma君が国外の研究所に着任したため、すぐに代わりの研究推進員を探すことができなかった。そこで、むしろ次年度は別の適切な研究推進員を雇用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
新たに研究推進員を雇用し、モデル方程式の数値計算や実験解析グループとの議論のまとめ役的なことをしてもらう。また、9月に台湾で開かれるワークショップなどに出席して、研究発表を行う予定である。
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