研究課題/領域番号 |
16KT0030
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山末 英嗣 立命館大学, 理工学部, 准教授 (90324673)
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研究分担者 |
マクレラン ベンジャミン 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (10723455)
松八重 一代 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (50374997)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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キーワード | 関与物質総量 / TMR係数 / 食料 |
研究実績の概要 |
人間が生きていく上で必要不可欠な「食」の生産には多岐にわたる資源採掘活動が関わっているが,本研究では関与物質総量(TMR)と呼ばれる指標を用い,それらを定量化し,食料に関する戦略的な資源戦略を構築することを目的として研究を進めた. 3年次は,初年度に確立した「食料」生産の関与物質総量のフレームワークに基づき,二年度に推算した種々の食料のTMR係数に加え,さらに100種類程度の食材についてTMR係数を整備した.それを基に日本のcookpad.com,あるいはFood Geniusに対し食材レシピに関するビッグデータを収集し,種々の調理食品に関するTMRの分布を統計的に解析した.特に後者については,日本と欧米における人気の高いレシピの抽出にも成功し,食文化の違いとそれによる資源強度の差異をテキスト解析により抽出できる可能性を見いだした.ベトナムのハノイ工科大学における調査を通じ東南アジア地域における穀類生産に関するインベントリデータ調査の共同研究を確約した. さらに2018年度は,次年度において決定した中止すべき食材である米,小麦,牛肉を中心に国内外の種々の生産体系の違いについて分析した.その結果,特に牛肉は生産体系の違いの影響が大きく,焼き畑を用いるような畜産形態の改善が重要であることが明らかになった. また,オーストラリア,ベトナム,ヨルダンをはじめとする外国人研究者との継続的なディスカッションの結果,外国の食料生産に関して,より幅広くかつ詳細なインベントリデータ収集の重要性が明らかになった.それらを本研究に反映することで,より精緻な解析,すなわち日本と諸外国との食料に関する資源依存メカニズムの差異を明らかにできることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では当初の予想より早いペースで食材のTMR係数に関するデータベースを構築できている.諸外国における食料生産のTMR係数についてはインベントリデータ収集速度にやや遅延はあるが,一方で欧米のレシピ(調理食材)に関するビッグデータ解析については,当初の予定より大量かつより深い解析を行うことに成功したことは予想外の大きな前進であった.さらにはオーストラリアやベトナム研究者とのワークショップを通じての情報交換も大きな進捗であった.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として第一に考えられることは,国外で生産される食材のTMR係数を集約させることである.牛肉については最終年度においてほぼ確定できたが,その他の畜産類,特に日本で消費量の少ない羊,山羊,あるいは果樹類についてインベントリデータを収集し,初年度で得られた結果を補正する必要がある.したがって,次年度はまずこれらのデータ収集に努める. また,これまでのデータは主に単位重量あたりのTMRとして評価していたが,食品の特性上,単位カロリーあたり,単位栄養素あたり,一人分の給仕量あたりといった評価も必要と考えている. この結果は,すでに述べたビッグデータ解析結果とも接続させ,可能であればiPhoneアプリといった形で「写真を撮った調理食材の資源強度を提供できる」ようなシステムの構築を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年1月に海外共同研究者と共同研究を行った際,さらなるインベントリデータ収集の可能性が提示された.しかし,それは2019年度以降において可能なことが分かった.このような理由により次年度における使用額が生じた. 延長年度の計画として,オーストラリアにおける食料(特に穀類,牛肉類)インベントリデータ収集を行う.シドニー工科大学のDamien Giurco教授と連携し,招聘あるいは訪問をし,現地におけるデータ収集とさらに他国における関連データの整理を行う.得られた成果は各国の食糧需要データと連結し,TMRを通じた資源強度として整理・分析を行う.
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