人間が生きていく上で必要不可欠な「食」の生産には多岐にわたる資源採掘活動が関わっているが,本研究では関与物質総量(TMR)と呼ばれる指標を用い,それ らを定量化し,食料に関する戦略的な資源戦略を構築することを目的として研究を進めた. 3年次は,初年度に確立した「食料」生産の関与物質総量のフレームワークに基づき,二年度に推算した種々の食料のTMR係数に加え,さらに100種類程度の食材についてTMR係数を整備した.それを基に日本のcookpad.com,あるいはFood Geniusに対し食材レシピに関するビッグデータを収集し,種々の調理食品に関する TMRの分布を統計的に解析した.特に後者については,日本と欧米における人気の高いレシピの抽出にも成功し,食文化の違いとそれによる資源強度の差異をテキスト解析により抽出できる可能性を見いだした.ベトナムのハノイ工科大学における調査を通じ東南アジア地域における穀類生産に関するインベントリデータ調査の共同研究を確約した. さらに2019年度は,諸外国を中心として,飲料に関するTMRを調査した.試算は水道水,コーヒー,紅茶,緑茶,アルコール類について行った.その結果,珈琲でも産地によって,資源効率に大きな差があることが分かった.例えば,ブラジルとタイ産の珈琲では6倍の差が見られた.これまでの研究では日本国内だけの製品についてしか考慮しなかったが,今後の評価において「産地」を考慮することの重要性が明らかになった.
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