研究課題
本研究では、世界の食糧・エネルギー需給(循環)の持続可能性を評価するために、それらの循環量が世界で最も多い国の一つであるブラジルに注目し、食糧およびバイオエタノール生産の持続可能性について食糧の主要成分である窒素の循環を軸に評価することを目的とし、最終年である平成30年度は計画に沿って下記のとおり実施した。(1)農業地域物質循環問題評価:2年目までにサンパウロ州のヒオ・クラロ試験地ピラスヌンガ試験地およびサン・カルロス試験地の農業試験地を対象に実施した地下水および地表水の調査結果、および窒素をはじめとする主要溶存成分、安定同位体などの分析結果についての取りまとめを行った。また、それらの結果に加えて既存情報や先行研究の内容を踏まえ、異なる土地利用(サトウキビ、大豆、トウモロコシなど)からなる農地スケールでの窒素収支を定量的に評価した。(2)広域農地-都市物質循環影響評価:農地および都市域を含むサンパウロ州のティエテ川流域を対象に準分布型流域水・物質輸送モデル(SWAT)を適用し、流出解析を実施した結果、農地よりも都市部が主な窒素負荷源となっていることが明らかになった。一方で、本流沿いに分布するダムのトラップ効果によって、結果的に流域からの窒素負荷量が大幅に減少していることも明らかとなった。(3)地域間循環影響評価:ブラジル最大のサトウキビの生産地であるサンパウロ州をはじめとした南東部地域では、近年生産量が頭打ちになっており、機械化や人件費の高騰が影響している可能性が明らかになった。一方で、人件費が安い北東部地域などでは生産効率的には採算ベースを確保しており、今後、サトウキビ栽培をはじめとする農業をとりまく持続可能な社会の構築・維持を実現していくうえでは、環境負荷との兼ね合いによるバランスの良い地域の発展の方向性を明らかにしていく必要があると考えられる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 9件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 学会・シンポジウム開催 (4件)
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