研究課題
令和元年度は,大淀川水系の河川を対象として,水文・水質観測,ならびに降雨流出解析と懸濁物質流出量推定のためのモデルの整備を行った。観測では,2019年6月4日~9月14日に,観測地点近傍で水位および気圧を測定した。また,同期間中に流量観測と懸濁物質(以下,SS)濃度測定のための採水を行った。観測結果から水位-流量関係式を求め,2018年の水位-流量関係と比較したところ,2018年から2019年にかけて同地点における水位と流量の関係に大幅な変化がないことが確認された。また,SS濃度測定結果から求めた流量-SS輸送量関係から,小規模出水でも河道への土砂流入が生じ易い特徴が示唆された。次に,観測地点の集水域を対象とし,タンクモデルによる流出解析を行った。モデルでは,国土数値情報の土地利用細分メッシュデータに基づいて,対象集水域を山地,水田,農地,宅地等に分類し,土地利用毎にタンクを設定した。タンクの構成については,山地は直列四段,それ以外は直列二段とした。解析では,レーダー・アメダス解析雨量から作成した1時間間隔の雨量を入力降雨とし,2018年6月1日~9月30日の再現計算を行った。結果として,灌漑期の流量変動を概ね再現できていることを確認した。さらに,前述のタンクモデルに組み込むための浮遊砂流出モデルを構築した。SS濃度変動の再現を試みた結果,概ね良好に濃度変動を再現できたものの,出水のピーク時とその後の流量減少時のSS濃度の再現性には改善の余地があると判断された。ただし,本研究では,モデルの検証に流量-SS輸送量関係から推定したSS濃度を用いていることから,モデルの改良に加え,SS濃度の時間変化に関する実測データの充実化が将来的な課題である。
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