研究課題/領域番号 |
16KT0037
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
門田 康弘 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (80548975)
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研究分担者 |
植原 健人 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 主任研究員 (30355458)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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キーワード | 植物寄生線虫 / ネコブ線虫 / 植物免疫 |
研究実績の概要 |
植物寄生線虫は最も農業被害額の大きな病原微生物の1つであり、年間被害額は世界全体で十数兆円と試算されている。本研究では植物の根圏に共生する微生物の中から抗線虫活性をもつ微生物、及び、植物に寄生線虫に対する免疫反応を誘導する微生物を探索する。このような根圏微生物により植物寄生線虫を防除することで、有用土壌微生物を殺さず、植物寄生線虫のみを選択的に防除する方法の開発につなげる。日本各地から採取した天然土壌から根圏に共生する細菌の中から、抗線虫活性を有する細菌、及び、植物に寄生線虫に対する免疫反応を誘導する細菌がいるか検証を進めている。また、細菌を捕食する自活性線虫が豊富な土壌では植物寄生線虫による害が少ないことが経験的に知られている。そこで自活性線虫の破砕液を植物へ処理したところ、植物は非常に強い免疫反応を誘導し線虫抵抗性が増強した。この抵抗性機構について調べたところ、処理した根において免疫関連遺伝子の発現が誘導されるとともに、細胞壁の強化に働くリグニンの蓄積が観察された。これは自活性線虫が根圏に集まった細菌を捕食する過程で植物の根に接触することで免疫を誘導しているのではないかと考えている。そこで、自活性線虫の大量培養系を確立し、破砕条件を最適化した。さらに、免疫マーカー遺伝子のプロモーターGUSラインを用いて、簡便に免疫反応の誘導を調べられるアッセー系を確立した。カラムクロマトグラフィー法により免疫誘導物質の単離精製、及びLCMSMSによる同定を進めている。また、国内で問題となっているアレナリアネコブセンチュウ本州型、及び、沖縄型のゲノムシークエンスしGenome Announcement誌に誌上発表した(Genome Announc. 28;6(26))。現在は、両ゲノムを比較して両病原型に特徴的なゲノム領域を探索するとともに、病原性に関わる因子の単離同定をすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自活性線虫が豊富な土壌では植物寄生線虫による害が少ないことが経験的に知られていたが、我々の研究から自活性線虫は植物に強い免疫反応を誘導する物質を持っていることが分かって来た。自活性線虫の大量培養系を確立するとともに、独自のアッセー系を確立して免疫誘導物質の単離精製を進めている。雇用している博士研究員が病気のため、昨年度までに予定していた研究の遂行に若干の遅れが生じた。現在は体調も回復して研究に従事しているため、研究が遅延した分について事業期間を延長して当初予定していた計画を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き自活性線虫から植物寄生線虫に対する免疫反応を植物に誘導する物質の単離同定を進める。免疫誘導物質が単離されたら、植物による免疫誘導物質の認識機構、及び、誘導される免疫反応を解明する。また、同様に植物免疫を誘導する根圏細菌について免疫誘導物質の単離精製にも取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
雇用している博士研究員が病気のため、昨年度までに予定していた研究の遂行に若干の遅れが生じた。現在は体調も回復して研究に従事しているため、研究が遅延した分について事業期間を延長して当初予定していた計画を遂行する。
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