研究課題/領域番号 |
16KT0042
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡田 勇 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (00650649)
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研究分担者 |
村上 勇介 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (70290921)
西川 由紀子 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (70584936)
日下 渉 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80536590)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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キーワード | 抗議運動 / ラテンアメリカ / 東南アジア / 地域間比較 |
研究実績の概要 |
当該年度は、翌平成30年度に実施する世論調査に向けた準備が主な作業内容であった。準備作業の中身としては、(1)調査対象国であるボリビアとカンボジアにおいて世論調査会社と折衝を行い、調査実施体制の検討を行うこと、ならびに(2)調査方法についての政治学理論、ボリビアとカンボジアの事例研究、および調査方法論についての検討を行うことが必要とされた。これらを行う上で、研究代表者は以下の作業を行なった。同時に、各研究分担者にはそれぞれ事例研究を進めてもらった。 1)調査方法論について、検討を深めた。平成29年7月7日関西学院大学での研究会に参加し、類似の方法で政治現象の複数国間比較を行なった研究について知見を深め、議論に参加した。また、平成30年1月25日、名古屋大学政治学ランチセミナーにて、本調査の持つ方法論についての問題と対応策を発表し、意見交換を行なった。 2)調査会社とコンタクトを行い、見積と調査体制について打ち合わせを行なった。平成29年11月24日にカンボジアで世論調査会社と打ち合わせを行い、調査費用の見積と調査体制について確認した。平成30年3月8日~25日にボリビアに出張し、世論調査会社と打ち合わせを行い、調査費用の見積と調査体制について確認した。 3)さらに、カンボジアとボリビアにおいて現地情勢について調査を行なった。平成29年8月下旬にカンボジアで行われた本務校の実地研修に同行する中で、近年のカンボジアの特に農村部における政治参加行動の実情を調査した。また現地研究者との意見交換を行なった。なかなか個人ではアクセスし難い農村部の実情を把握することができた。ボリビアでも平成30年3月8日~25日に識者や現地政府関係者に対して近年の政治情勢について聞き取りを行った。 4)並行して、政治学理論、対象2カ国についての先行研究、調査方法論についての重要論文を収集し、読了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、当初の予定通り、翌30年度に実施する予定の世論調査の準備を進めることができた。調査対象国を特定し、実際に世論調査会社とコンタクトを行なったため、利用可能な予算の範囲内で、2カ国で世論調査を実施することが可能であるとの見通しを得ることができた。また、調査にあたってのスケジュールや、調査を実施する上で必要な手段についても直に確認することができ、実現可能性が担保されているとの認識を得た。 もっとも、カンボジアで2018年7月末、ボリビアで2019年12月に国政選挙が予定されていることから、調査スケジュールに気をつけなければならないこともわかった。とりわけ、それらの直近時期に調査を行うことは困難であると考えられる。そうした実際面での要注意点を確認できたことも収穫であった。 他方で、調査実施の方法だけでなく、重要な先行研究を押さえることもでき、調査方法論についての考察も深めることができた。当初より、複数地域間の比較を研究課題の主眼とすることから、調査方法論の検討は困難を極めることが予想されたが、様々な機会を用いて有意義な検討を行うことができた。従属変数の設定と異文化間の測定、交絡バイアスの除去のためのランダム化実験手法の導入など、調査票のデザインを行うに先立つ方法論的な検討を進めることができたことは重要であった。 また、必ずしも調査対象国として選別するには至らなかったが、研究分担者によるペルーやフィリピンの政治についての研究成果も発表され、それらから得られた知見は本研究で調査対象国を選別するのに大いに役立った。 以上より、さらに検討を深める点は残されているものの、概ね順調に進んでいると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、本研究課題の3年目であり、もっとも重要な段階に入る。質問票を作成した上で、世論調査を実施することが求められる。実際に、2カ国の世論調査会社と継続的にコンタクトを取りながら調査を実施していかなければならない。これは当初の方針通りであり、このまま進めば実現することは可能であると考えられる。 1つの懸念点は、調査実施が対象国の状況によって困難になる可能性である。まず2018年7月末にカンボジアで実施される国政選挙があり、すでにその選挙前に調査を実施することは困難であるとの見通しを得ている。この選挙では、すでに第一野党が解党されるなど、政治的対立が深まることが危惧されており、もし仮に国内情勢が混乱した場合には、選挙直後もまた調査実施ができない恐れがある。その場合は最終年度である平成31年度に調査を実施することになるだろう。他方で、類似の懸念は2019年12月に国政選挙を控えているボリビアにも当てはまる。これらの点に注意しながら、調査実施を行なっていきたい。 また、それらと同時に、各国の事例研究についても研究成果を発表できるよう、進めていきたい。世論調査で取り上げられないアジアやラテンアメリカの国々についても、それらの事例研究がもたらす知見は相互に関係するものであるし、世論調査で得られた知見が他の域内諸国にとってもつ外的妥当性を検証する必要もあるため、他国の研究も進めてもらう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、次年度の世論調査に向けて万全の準備を整えるためである。本年度に2カ国の調査会社と打ち合わせを行い、平成30年度以降に行う世論調査についての見積りを入手した。2つの見積りに従えば、世論調査を実施する予算は十分であるが、世論調査を実施する時期が未定であること、さらに方法論によってはさらに追加的な支出が必要になる可能性もある。また世論調査を実施するだけでなく、打ち合わせのために2カ国に渡航する必要もあり、イレギュラーな事態が生じれば複数回の渡航が必要になる恐れもある。以上に鑑みて、不測の事態に可能な限り対応できるようにするため、次年度使用額を残すことを決定した。 次年度は、以上の不測の事態に対する準備を万全にしながら、淡々と計画通りに調査を実施する。
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