研究課題/領域番号 |
16KT0055
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡島 俊英 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (10247968)
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研究分担者 |
中井 忠志 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00333344)
庄司 光男 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (00593550)
村川 武志 大阪医科大学, 医学部, 助教 (90445990)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | 銅アミン酸化酵素 / 補酵素 / 遷移状態 / 銅 / 反応中間体 / ゆらぎ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、細菌Arthrobacter globiformisに由来した銅アミン酸化酵素(AGAO)を用いて、反応促進に特化したタンパク質がもつ動的な特性が、反応の遷移状態の安定化、すなわち活性化エネルギーの低下による反応速度加速にどのように寄与しているのか明らかにする点にある。実験的にAGAOの水素原子座標を決定し、量子化学計算に用いるために、まず反応初期状態である酸化型酵素およびセミキノンラジカル反応中間体の中性子構造解析を試みた。酸化型酵素では、フルセットの中性子回折データの取得に成功した。同じ結晶から得られたX線回折データとともに精密化し、構造決定に成功した。トパキノン(TPQ)補酵素のプロトン化状態から、通常のエノール型に加え、ケト型TPQが含まれていることがわかった。一方、嫌気基質ソーキングによって作り出したセミキノンラジカル反応中間体については、テスト測定において2.4オングストローム分解能の回折イメージを得ており、今後、分解能の改善を図っていく。量子科学計算においては、各反応中間体におけるプロトン化状態を量子化学計算に基づいて決定した。酸化型酵素の中性子構造において見出されたケト型TPQは、過剰にプロトン化された状態で形成されていることがわかった。また、アミノレゾルシノール中間体では自発的な銅イオンへの電子移動は起こらないことがわかった。この計算結果は、これまで想定していた通りに、コンフォメーション変化によってTPQが銅イオンに接近することが必要なことを裏付けた。セミキノンラジカル中間体が生成するステップに関しては、変化の過程のエネルギープロファイルを詳細に解析した。その結果、まずTPQリングが、OFF-copperコンフォメーションの狭い領域から回転せずに出てきて、ほぼC4-OHが銅イオンにほぼ配位した位置で、His431側鎖の一時的構造変化を伴って180°回転することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化型構造におけるアミン酸化酵素の中性子構造解析は、世界に先駆けた極めて重要な成果である。70 kDaの分子サイズの解析は、他に例がない。ケト型の新しい補酵素構造を見出すとともに、補酵素、水分子、およびアミノ酸残基のプロトン化状態、さらには水素結合ネットワークを一義的に決定することに成功した。また、量子化学的な計算によって、遷移状態にアプローチする課題に関しても、本格的な解析の前段階となる反応中間体状態のプロトン化状態をすべての中間体で決定することができた。以上のことから、順調な進捗状況と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、反応中間体状態を中性子解析に適した大型結晶(~5 mm)において作り出すことに特に注力している。大型結晶では基質ソーキングによる結晶ダメージが大きく、高分解能の中間体結晶が得られていない。結晶サイズと基質ソーキング条件のより厳格なコントロールによって、対応することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の物品の購入の次年度への繰越や海外出張予定の変更などのため、想定よりも使用額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越ていた機器の購入を行うとともに、適正な予算使用を進める。
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