研究課題/領域番号 |
16KT0056
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大山 浩 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60192522)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | 遷移状態 / 配向相関 |
研究実績の概要 |
多自由度系の反応において、多数の自由度が複雑に絡み合った運動軌跡群としての実効的反応座標と遷移状態の基準モ-ドとの対応は 必ずしも明確でない。実際に、多自由度系の反応において、どのような運動が反応座標に相当するかを実験的に決定するのは、容易ではない。 瞬間近似の下では、多次元配向制御により、ポテンシャルエネルギー曲面上の反応系の特定の構造が既定され、同時に反応物の運動モードのベクトル化が行われる。また、反応分子の回転量子状態の組み合わせは、分子配向を制御したもとでの、遷移状態近傍の対称性のことなる構造を混合し、遷移状態に至る有効な反応座標に沿った競争的運動を誘起する上で重要であると思われる。したがって、多次元配向ベクトル相関の多次元構造と反応物モード及び生成物モ-ドとの相関を見出すことは、実験による反応座標の探索と遷移状態 とその基準モードの探索による反応制御へとつながると期待される。 現在、この実現に向けて2つの単一量子状態選別分子線の発生に取り組んでいる。 1つは、六極不均一電場による単一量子状態選別性の向上に向けてバルスラジカル分子線源の改良を行っている。 他方、磁場掃引による単一量子状態選別可能な不均一磁場状態選別器を試作し研究を進めている。具体的には、大電流(400A)、パ ルス幅(10マイクロ秒)で駆動可能なパルス電源とそれを用いた小型電磁石の開発とそれを組み込んだ六極不均一磁場を試作し、性能評価と改良を進めている。一方で、単一量子状態選別に伴い信号強度の減少のため測定を困難にしている、本年度は特にパルス分子線源の改良により分子線速度の単色化と高強度化のための装置開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
反応分子の回転量子状態の組み合わせは、分子配向を制御したもとでの、遷移状態近傍の対称性のことなる構造を混合し、遷移状態に 至る有効な反応座標に沿った競争的運動を誘起する上で重要であると思われる。したがって、多次元配向ベクトル相関の多次元構造と 反応物モード及び生成物モ-ドとの相関を見出すことは、実験による反応座標の探索と遷移状態とその基準モードの探索による反応制 御へとつながると期待される。この実現に向けて単一量子状態選別した反応分子の生成のための、準備を進めている。特に不均一磁場によ る状態選別を可能とするため、高電流パルス駆動の不均一磁場の製作を遂行している。具体的にはQBTモジュールを用いた大電流(400 A)パルス幅(10マイクロ秒)駆動可能なパルス電源を用いた電磁石の開発とそれを組み込んだ六極不均一磁場を試作し、これを用 いた予備実験を開始した。試作器の完成に時間がかかり、現在のところ、試作器の性 能評価が不十分であり、その問題点を十分洗い出せていない。また単一量子状態選別に伴い信号強度の減少のため測定を困難にしている。この解決のため、パルス分子線源の改良により分子線速度の単色化と高強度化のための装置開発に時間が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
試作した不均一磁場状態選別器をもとに実用上の問題点をさらに明らかにし、分子線の単色化と高強度化のための装置の改良を行うとともに、手法の確立をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
試作器の製作に時間がかかり、問題点を十分に洗い出すのに時間がかかった。また分子線の単色化と高強度化を進めている。 このため、これらの予備実験をもとに行う装置の改良と実装に必要な経費が未使用である。 (使用計画) 試作器の性能評価と問題点を洗い出すための費用及び、その改良と実装に向けた真空装置製作費用として使用する。
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