研究課題/領域番号 |
16KT0069
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
青木 一洋 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (80511427)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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キーワード | oncogene addiction / KRas / BRaf / intrinsic resistance |
研究実績の概要 |
多くの癌細胞の生存は少数の癌遺伝子に大きく依存している、いわゆる「癌遺伝子依存性(Oncogene addiction)」というある種の脆弱性を有している。近年の分子標的薬による治療は、この癌細胞がもつ脆弱性に頼っており、癌細胞が依存している癌遺伝子を標的とすることで癌細胞を特異的に、かつ効果的に死滅させることができる。癌遺伝子依存性といった脆弱性がある一方で、癌細胞は分子標的薬に対する抵抗性、すなわち頑強性を有していることが知られている。例えば、分子標的薬に対する抵抗性は「内因的抵抗性(intrinsic resistance)」として知られている。このように癌は脆弱性と頑強性の相反するシステムを有しているが、発癌過程のどの時期にどのようにしてこのようなシステムを獲得するのか、またその原理については十分明らかにされていない。そこで本研究では、「癌の脆弱性と頑強性を構成的に創出し、その創発原理を抽出すること」を目的とした。 本年度は、KRas、またはBRafに変異が入った正常培養細胞の樹立を試みた。RPE1-hTERT細胞やARPE細胞、MCF-10A細胞などいくつかの細胞種において、CRISPR/Cas9とssODNを用いた変異導入を試みたが、いずれにおいても別の変異が導入され、目的となる細胞株を得ることができなかった。そこで商用で利用可能なMCF-10A/KRasV12細胞とMCF-10A/BRafV600E細胞を購入した。いずれの細胞も目的の遺伝子変異が入っていること、またこの時点でMEK阻害剤に対してWTと同様の抵抗性を示すことから、癌遺伝子依存性を起こしていないことを確認した。さらに薬剤依存的にこれらの癌遺伝子をKOするためのCRISPR/Cas9レンチウイルスベクターも作製できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KRas、またはBRaf遺伝子に変異を含む正常細胞を得ることができ、さらに薬剤依存的にこれらの癌遺伝子をKOする手法も確立できたため、今後の解析を十分に行うことができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、癌遺伝子依存性の定量的な確認と、実際に癌遺伝子依存性を起こすための条件検討を行う。具体的には、ソフトアガーアッセイやヌードマウスへのxenograftにより生き残ってきた細胞から細胞株を樹立し、MEK阻害剤に対する抵抗性や遺伝子をKOしたときの生存性を確認する。癌依存性が確認できた場合には、癌依存性が起きる前後でゲノムやエピゲノムの変化を次世代シークエンサーにより解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞の樹立に時間がかかり、消耗品の消費が滞ったため。 次年度は、前年度の遅れを取り戻すべく、研究を遂行する。次年度使用額分の助成金については、消耗品(遺伝子導入試薬、細胞培養の血清など)に使用する。
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