研究課題
単一細胞ではなく、組織としての統合的な細胞運動の基本原理を解明することを目的とし、アフリカツメガエル胚に注目した。アフリカツメガエル胚において、原腸形成後に脊索原基の頭尾方向への伸長を統べる力学原理を、硬さを自在に制御可能な基板材料を駆使して、①牽引力顕微鏡を用いた自発運動する胚葉の生み出す局所的な力(力場)の精密計測、②自己組織化の過程での細胞骨格の対称性の破れの数理解析、③刺激応答材料やloss of functionといった外的摂動への動的応答、を有機的に組み合わせた、システム生物学手法で解明する。本年度は、これらを行うために必要な二軸方向牽引システムのセットアップに従事した。また、当初はpHの変化により硬さを制御するゲル基板を使用する計画であったが、細胞への影響を更に抑え、かつ、より幅広く硬さを変えられるゲル基板の開発を行った。
2: おおむね順調に進展している
外部からの力学的摂動に対する中胚葉組織のシステム応答を解明するために必要な二軸方向牽引システムを構築した。また、細胞への影響を更に抑え、かつ、より幅広く硬さを変えられるゲル基板の開発を行った。
硬さを自在に制御可能なゲルのシートを二軸方向に牽引するシステムがひとまず完了したため、今後は装置の最適化と並行してフィブロネクチンや胚内の細胞外基質タンパクを用いてゲル表面の接着能を最適化する。細胞接着能を定量するために、細胞を基板からはがすのに必要な力をパルスレーザーによって誘起される圧力波を用いて計測するという、申請者のグループが開発した手法を用いる。これに並行して、アフリカツメガエル胚が生み出す力学場の精密計測及び細胞骨格の対称性の破れとの相関を解析する。このように定量的な物理学的リードアウトを得ることにより、集団的細胞運動の基本原理に迫る。
装置開発に当初の予定より時間がかかり、旅費を使用しなかったため
二軸方向牽引システムの完成及びゲル基板の開発を終えたため、今後国内で頻繁に共同研究者(連携:上野直人(基生研)、佐野雅己(東大))との打ち合わせを行う予定
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
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