研究課題/領域番号 |
16KT0072
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
竹内 秀明 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (00376534)
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研究分担者 |
中村 遼平 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (30756458)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | クローナルユニット / パリウム / ATAC-Seq / RNA-Seq |
研究実績の概要 |
脊椎動物の大脳は,背側のパリウム(大脳皮質・海馬に対応)と,腹側のサブパリウム(大脳基底核に対応)に大別される。申請者はこれまでに、パリウムの各区画構造は成長過程に生じる「新生ニューロンの細胞系譜単位(一つの神経幹細胞から発生した細胞群)」が「レゴブロック」のように組合わさることにより構築されることを世界に先駆けて発見した。本研究ではパリウムの細胞系譜単位を規定する転写因子を同定し、IR-LEGOを用いた機能解析によりパリウムの区画構造を生み出す構築原理を解明する。胚発生期の神経幹細胞はより高い分化能を有するが、脳発達期に神経前駆細胞に分化して一定の形質を獲得して細胞系譜単位を形成する。この不可逆的な過程には、遺伝子発現のオン/オフを基底状態で決定するエピジェネティック機構が寄与していると考えられる。平成29年度は、各細胞系譜単位におけるクロマチン構造変化をゲノムワイドで検索し、細胞運命を規定する転写因子候補を同定することを目的にした。ある特定の神経幹細胞由来に発生した新生ニューロン群(細胞系譜単位)をGFPでラベルし、GFPを指標として細胞系譜単位を顕微鏡下でヴィブラトーム切片から摘出した。この手法を用いてパリウムの細胞系譜単位(30個以上)を解剖により別々に摘出し,ATAC-Seqによりオープンクロマチン領域を全ゲノムレベルで比較した。同時にRNA-Seqを行って、各細胞系譜単位の遺伝子発現プロファイルを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の実績により、30個以上の細胞系譜単位のオープンクロマチン領域を全ゲノムレベルでATAC-Seqにより同定した。その結果、細胞系譜特異的なオープンクロマチン領域が存在する一方で、同じ脳領域にある細胞系譜単位は類似したオープンクロマチン領域を持つことを示唆した。またRNA-Seqにより各細胞系譜単位の遺伝子発現プロファイルの作成に成功した。当該年度の結果を足場にして、目的の転写因子候補を同定できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度はオープンクロマチン領域に共通して存在する転写因子結合部位から、候補転写因子を同定する。またRNA-Seq法によって細胞系譜単位の転写プロファイルを作成し、オープンクロマチン領域が転写制御を受けていること、候補転写因子が実際に発現していることを確認する。次にIR-LEGO法を用いて、同定した転写因子候補を異所的に強制発現することで、メダカ新生ニューロンの細胞系譜を人工操作できるかについて検定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の国内出張費における宿泊費が当初の予想よりも安かったため4397円余った。本年度の国内出張費として使用する。
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