研究課題
28年度においては,まずself-condensationにおける力学メカニズムの解明を目指した検証を行った。具体的には,これまでにself-condensationに必須と考えられた間葉系幹細胞を用いて,さまざまな硬さの異なるゲル上で 臓器原基の誘導実験を行った.特異的な硬さの基板上で大きな細胞集合運動が起きる原因を考察するため,細胞―ゲル間の接着力(Fcell-gel)及び細胞―細胞間の集合力(Fcell-cell)の二つの力学的相互作用の大小関係がself-condensationに重要と仮説をたてた.実際,柔らかいゲル上に弱く接着する細胞はFcell-gel ≪ Fcell-cellの力バランスから表面に臓器原基が形成されない.一方で硬いゲルに強く接着する細胞はFcell-gel > Fcell-cellの力バランスから集合運動が行えず,二次元上の細胞シートを形成する.適切なゲルの硬さの上で程よく接着する細胞はFcell-gel < Fcell-cellの力バランスから大きな細胞運動が誘導されると考えられた.以上の知見から,self-condensationを誘導するにあたって, 間葉系幹細胞の “接着性の差”が重要なパラメーターであると考え,より効率的に臓器原基を誘導するための間葉系幹細胞の評価法の確立に着手した.まず未分化細胞(iPS細胞)と間葉系幹細胞を播種し,プラスチック皿に強接着した細胞を観察した.すると,self-condensation誘導能を持つ間葉系幹細胞の方が強接着する細胞の数が未分化細胞よりも顕著に多いことを見出した.今後臓器原基誘導に最適な各種細胞の濃縮・評価法の構築を進める.以上の成果は, 国内招待講演3件にて報告,特許申請,論文1報発表を完了した.さらに現在,新たな論文を投稿準備中である.
1: 当初の計画以上に進展している
細胞を播種する外部環境の硬さ、という精密な物理量の設計に基づく独自の細胞集合メカニズムを応用することにより、様々な臓器原基の誘導が可能であることを示した。さらに、新たな品質評価系として細胞の接着力によるソート系の開発に着手でき、今後質の高い臓器原基形成に応用可能か詳細な検証を行っていく。
28年度に明らかとなった物理的な環境が及ぼす生物学的な意義を、フェノタイプを分子生物学的手法により解析することにより解明していく。
想定していた顕微鏡機器に関して、デモ実験を行ったところ、想定していた細胞接着力の評価については、事前の打ち合わせで可能であるとされていた評価項目が限定的であることが明らかとなり、購入を控えたため。なお、新たな機器購入をすることはなかったが、独自に顕微鏡の光路を改良し、想定していた接着力の評価系は機器購入を行うこと無く実現できることが判明している。
本研究を通じて新たに出願した特許技術の強化のため、さまざまな細胞の網羅的な評価のため研究補助員を登用し、詳細な検討を行っていくために充当する予定である。また、実験に必要な消耗品の購入に充てる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 8件、 招待講演 24件) 産業財産権 (1件)
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