Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は、様々な刺激の受容体として細胞間相互作用の重要な役割を担う分子であり、生命機能の解明という基礎研究分野のみならず、創薬のターゲットとしても非常に注目され続けてきた。しかしながら、未だリガンドや生理機能との関連が不明なオーファンGPCRが多数存在し、GPCRが支える多様な生理機能の全容解明には程遠い。この理由の一つは、従来のGPCR研究がリガンド同定を中心に進められ、したがってリガンドが同定されなければ解析が進まないという点にある。 そこで本研究では、私たちが見出した多様なロドプシン(光感受性GPCR)を光スイッチとして用いることで、GPCRのリガンドを決めることなく光刺激を使ってGPCRが関与する生理機能を解析するという新しいアプローチを試みる。具体的には、①光感受性GPCRツールの開発と評価、②遺伝子導入コンストラクトの作製と遺伝子改変動物の作製、③遺伝子改変動物の表現型解析、という流れで研究を進めており、2019年度は以下の研究成果を得た。
・細胞内カルシウム濃度を光操作できる光感受性GPCRツールについて、詳細な光反応および、発色団を外部から加えなくても血清中に含まれている成分によって十分に機能できることを明らかにした。 ・現時点で最も長波長の光に感受性をもつアゲハチョウの視物質の機能解析および活性化するGタンパク質の選択性の改変に成功し、透過性の高い長波長光に感受性をもつ新規光感受性GPCRツールを作製した。 ・Cre/loxPシステムを用いて光感受性GPCRツールを組織特異的に発現させた遺伝子改変マウスを用いた実験によって、体外からの光刺激による非神経系の生理応答の光制御に成功した。
|