研究課題/領域番号 |
16KT0085
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小澤 弘明 千葉大学, 国際教養学部, 教授 (20211823)
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研究分担者 |
崎山 直樹 千葉大学, 国際教養学部, 講師 (10513088)
佐々木 綾子 千葉大学, 国際教養学部, 講師 (20720030)
水島 治郎 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (30309413)
福田 友子 千葉大学, 国際教養学部, 准教授 (40584850)
伊藤 尚子 千葉大学, 大学院看護学研究科, 特任准教授 (60583383)
後藤 弘子 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (70234995)
周 飛帆 千葉大学, 国際教養学部, 准教授 (80270867)
宮國 康弘 千葉大学, 予防医学センター, 特任研究員 (90734195)
五十嵐 洋己 千葉大学, 国際教養学部, 助教 (90768300)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | 人の移動 / ソーシャルキャピタル / 移民 / 難民 / 人身取引 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究計画期間の二年目として、研究分担者と連携研究者による比較研究に関する複数回の研究会をもつとともに、初年度の量的調査の準備を経て、日本語版の調査票を作成した上で、調査それ自体に対する倫理審査を申請した。この倫理審査の過程で、調査票の内容についてもさらに彫琢し、審査委員会で承認を得た調査票を英語、中国語、韓国語に翻訳すると同時に、さらに英語から11言語への翻訳作業を実施し、合計14言語への翻訳作業を行った。 比較研究に関する研究会においては、移民や難民に関する歴史研究(アイルランド、東ヨーロッパ、中国、北米大陸ほかの19世紀から20世紀の経験の分析)に加えて、移民・難民をめぐる現代の政治変動の特徴をオランダ等を事例として検討した。このさい、グローバリゼーション、新自由主義、ポピュリズムなどのキーワードを分析枠組みとして比較研究の軸を検討することになった。また、新たにハワイをフィールドに移民研究を行っている研究者を研究分担者に迎え、日本への移民だけでなく、日本からハワイへの移民を分析することを通じて、比較研究の幅の拡大につとめた。 フィールド調査は、中国への移民・難民の受け入れ、日本への労働力移動を中心に中国山東省済南大学で、調査と研究交流を行った。済南大学は千葉大学の大学間交流協定校であり、特に外国語学院の教員との研究交流を実施した。山東省は、歴史的には台湾への移民や中国東北部(旧満洲)への移民で知られているが、現在では「新移民」という新たな概念で把握する方法について議論を行った。また、国内では、日本語学校に通うインドネシア人学生に対するインタビュー調査を愛媛県新居浜市で実施した。さらに、本研究の研究分担者をつとめ、現在サバティカル研修中の2名の研究者には、それぞれ研修先であるニュー・ジーランドと中国における研究状況についての調査を委託している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、研究全体に対する倫理審査を申請し、その過程で、研究方法に関する多くの示唆をえた。たとえば、移民、人身取引被害者、難民のカテゴリー分けについて、また、支援団体・組織・機関と対象者自身との相互関係について、調査に応じることによる不利益についての認識、任意性の保証、調査記録の保存方法について、などである。これらの検討を踏まえた上で、十全を期した調査票の作成を行うことができた。 また、研究体制の構築という観点から見れば、本研究のメンバーが参加する千葉大学グローバル関係融合研究センター(2017年4月設立)と協力しつつ、特に難民関連の研究協力を行った。また、国連UNHCR協会の協力を得て、難民映画祭の一環として「シリアに生まれて」の上映会を開催して、研究成果と教育との架橋を図ることができた。このように、研究ネットワークの構築、及び教育との連携という観点からは顕著な成果を挙げたと言うことができる。 研究計画二年目の進捗状況という点から評価すれば、まずは、量的研究の基盤が築かれたという段階で、さらに質的研究との相互の検討を図るには、量的研究自体のいっそうの進捗が前提となると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画三年目は、完成した調査票をもとにウェブベースで調査を実施し、具体的な移民・難民等の支援活動に従事している実務者に対するインタビュー、アンケート調査を展開する。このウェブベースの調査の成否が、有用なデータの確保にとって喫緊の課題であると認識している。また、前年度は十分には展開することができなかった海外における事例研究・フィールド調査との接続に取り組むこととしたい。 理論的には、こうした量的調査と質的調査とをどのように架橋するか、という課題について引き続き検討を深めるとともに、引き続き論点整理のためのサーベイ論文を執筆することを計画している。 研究体制の構築との関連で言えば、2017年度に発足した千葉大学グローバル関係融合研究センター(本科研のメンバーが三名参加)との協力関係をさらに深めるとともに、同センターが有する研究資源や研究ネットワークを利用して、より国際的な研究の展開を図ることに注力したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由 本年度は、倫理審査への対応に多くの時間を費したため、質的調査のうち、調査票の作成及び翻訳作業に予想以上に手間取った。そのため、具体的なインタビューやアンケートを展開する時間が不足した。また、インタビュー担当者の出張やサバティカル研修のための時間の捻出がうまくいかなかった側面もある。また、研究文献の収集についても、基本文献のサーベイは順調に進んだものの、研究資源の隅々にまで目配りすることができず、収集作業に時間を必要とした。 使用計画 質的調査に関しては、質問票の内容自体についての充実を図ることができたのに加え、翻訳作業も終了したため、これから実施するウェブベースの実務作業にスムースに移行することができると考えている。またインタビュアーに関して言えば、大学院生等による調査の代行を含めて、体制の整備につとめたい。資料の収集という観点では、基礎作業は終了したと考えられるため、今後、一層の充実を図ることが可能となると考えられる。
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