研究課題/領域番号 |
16KT0086
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
城山 英明 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 教授 (40216205)
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研究分担者 |
勝間 靖 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (80434356)
岸本 充生 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 特任教授 (60356871)
詫摩 佳代 首都大学東京, 社会科学研究科, 准教授 (70583730)
松尾 真紀子 東京大学, 政策ビジョン研究センター, 特任助教 (40422274)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | グローバルガバナンス / 感染症 / 分野間関係 |
研究実績の概要 |
本研究は、グローバルヘルス・ガバナンスについて、学際的かつ実務との連携も踏まえて歴史的構造変容やマネジメント上の課題について分析し、政策提言を行う。具体的には以下の5つの作業を行う。①エボラ出血熱等を巡る国際対応のレビューの総括。②グローバルヘルス・ガバナンスの歴史的変容と位置づけの検討。③保健と人道、貿易、安全保障、金融・開発といった関連セクターとの関係に焦点を当てたグローバルヘルス・ガバナンスの構造分析。④国際、地域、国、地方レベル間関係問題、多層的リスクの相互関係に関する複合リスクの問題や、官民連携の問題に焦点を当てたグローバルヘルス・ガバナンスのマネジメント上の課題の検討。⑤感染症タイプ・状況別グローバルヘルス・ガバナンスのあり方の検討。 本年度は、上記作業のうち①、②、③に関して、文献調査と関連する学会・会議等での発表や議論を通じて、歴史的構造変化を踏まえた上で、現在進展しているグローバルヘルス・ガバナンスの改革に関する情報収集や分析を行った。そして達成事項と残された課題について政策決定者とアカデミア等による国際ワークショップを開催した。緊急時の危機管理体制と平時からのヘルスシステム強化に関する、WHO内部の組織改革やWHOと国連組織(人道等の枠組みであるOCHAなど)との枠組み構築については共通の方向性が確認されたが、具体的な手順・運用・実施における課題が今後の焦点となり、その局面では新たなアクター(シンクタンクや民間)との連携も重要であることが分かった。また、特にWHO西太平洋事務局でのヒアリングから、過去の地域事務局における危機管理のレビュー・教訓の抽出や比較分析の必要性を認識するとともに、長期的な国際保健行政の構造設計(集約的な構造と分散のバランス等)に関する議論を通じ、①、④や⑤の作業への示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に掲げた5つの作業(①エボラ出血熱等を巡る国際対応のレビューの総括、②グローバルヘルス・ガバナンスの歴史的変容と位置づけの検討、③グローバルヘルス・ガバナンスの構造分析、④グローバルヘルス・ガバナンスのマネジメント上の課題の検討、⑤感染症タイプ・状況別グローバルヘルス・ガバナンスのあり方の検討)に関して、計画時に記載した通り順調に進んでいる。 グローバルヘルス・ガバナンスの歴史的構造と変容については、文献調査等をベースに、論文や論文草稿をまとめた。また、最近のガバナンス改革論議については、文献調査と関連学会(国際保健医療学会、World Health Summit、バンコク・マヒドン王子賞会議、米国リスク学会等)や国際機関(WPRO,UNDP)へのヒアリング・発表・議論等を、WHO総会、伊勢志摩G7サミット、TICAD、神戸保健大臣会合、国連総会など様々な政治的な動きや議論を実務家とも緊密に連携しながらフォロー・アップデートしつつ、検討を進めた。特に、国際ワークショップを開催することで実務家(WHO、UNOCHA、UNICEF等の国連機関に加え、国内の厚労省、外務省、内閣官房、財務省等の関係省庁)やチャタムハウスなど国際的なシンクタンクを交えてStrengthening Global Health Governance Architecture - What are the achievements and what are left behind(2016年11月東京大学)と題する国際ワークショップを開催したことは幅広関係者間で突っ込んだ議論を行えた点で有用であった。また、WHO西太平洋事務局へのヒアリング(2016年11月)を行うことで、過去の地域事務局における危機管理のレビュー・教訓の抽出や比較分析の必要性など検討すべき事項についての示唆も得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度以降については、当初計画していた通り、研究目的に掲げた5つの作業項目で相互に連携しながら展開をする予定である。具体的には、以下の通り。 グローバルヘルス・ガバナンスの歴史的構造的分析については、文献調査を基礎に継続的に行う。また、実務家と緊密に連携しつつ、WHO総会、国連タスクフォースのレビュー、2017年のドイツのG20保険大臣会合といった政治動向と並行して関連事項のアップデートを行い、エボラ出血熱等を巡る国際対応のレビューの総括を行う。そこで得られた知見をほかの作業にインプットするとともに、シンポジウムの開催等を通じて実務等にも継続的にフィードバックする。この過程では、グローバルヘルス・ガバナンスの歴史的変容と位置づけの検討、グローバルヘルス・ガバナンスの構造分析(人道や安全保障、貿易等グローバルヘルスと交錯する分野の関係分析)、グローバルヘルス・ガバナンスのマネジメント上の課題の検討(特にレベル間関係問題、複合リスク問題、PPPの課題)を、これらの相互関連にも着目して研究・分析する。また、感染症タイプ・状況別グローバルヘルス・ガバナンスのあり方の検討については、感染症のタイプを決める変数(感染率の高い空気感染するものと相対的に感染率の低い接触感染、重篤な症状をもたらすものと軽症のもの)や、発生国・発生地域(特にWHOの地域事務局)の組織・対応の比較について、過去の具体的な事例(エボラ出血熱のほか、SARS等)に基づき比較しつつ検証することでマトリクスを精緻化する作業を実務家の協力を得て行う。最終年度は、以上の作業を再整理・議論し、包括的な政策提言にまとめあげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額としての大きな部分は、旅費と謝金である。本年度開催した国際シンポジウムでは招聘旅費を見積もっていたが、日程調整上、一部の招聘予定者を招聘することができず、また、シンポジウムの企画に当たり、東京大学の政策ビジョン研究センターとの共催として開催することができたため、必要な費用を分担し合うことができた。このため、旅費の大部分と講演謝金の一部についての費用が当初の予定より減じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度も引き続き、今年度招聘することのできなかった関係者・研究者も含めた、国際シンポジウムを企画することで継続的なさらなる議論が必要である。そのため、海外研究者や実務家等の招聘した国際シンポジウムを継続的に企画していることから、次年度分の経費を必要として用いる。
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