研究課題/領域番号 |
16KT0089
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
三野 和雄 同志社大学, 経済学部, 教授 (00116675)
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研究分担者 |
川浦 昭彦 同志社大学, 政策学部, 教授 (10271610)
田辺 明生 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30262215)
伊多波 良雄 同志社大学, 経済学部, 教授 (60151453)
八木 匡 同志社大学, 経済学部, 教授 (60200474)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | 経済成長 / 多様性 / 産業構造の変化 / 金融市場の発展 / 貿易構造 / 所得分配 / 文化的基盤 |
研究実績の概要 |
研究代表者の三野は、インドの経済成長の特徴を調べ、それを反映した理論的なモデルの原型を作った。インドでは、農業異部門のGDPシェアは標準的な成長理論通りに低下しきているが、農業部門の雇用のシェアはGDPシェアに比例して下がってはいない。またサービス部門に占める金融業の割合が大きいことや、所得分配の不平等が急速な経済成長の過程で拡大傾向にあるなどの特徴がある。構築を目指している理論モデルは、既存の理論を修正することにより、それらを説明することを狙っている。 研究分担者の八木、伊多波、田辺は、インドにおける幸福度に関する大規模なアンケート調査を実施した。この調査は、本研究のメインテーマであるインドにおける文化的多様性と経済成長の関係を分析するための重要な資料となるものであり、現在八木が中心になって調査結果の内容を精査している。調査の結果は、八木たちがこれまで行ってきた日本における幸福度の調査結果とは明確な差異が現れており、とりわけ所得分配の平等度と幸福度の関係については、日印の違いが大きいことが見て取れる。これらの調査結果は、文化的基盤というより広い視点からインド経済の成長の特質を捉える貴重なデータになることが期待される、 研究分担者の川浦は、前年度に引き続き、インドにおける市場構造や選好の多様性と貿易パターンの関係についての理論・実証研究を続けている。この研究の成果は、インド経済のグローバリゼーションと経済成長の関係を分析するため有用な情報を与えることが期待される。なお研究分担者の田辺は、学務の都合で前年度に延期をしたインドの社会構造に関する現地調査を実施し、インドの経済成長の文化的基盤を探るために非常に有用なデータを収集することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、本研究の重要な研究手段であるインドにおける大規模アンケート調査の体制が整わなかったことや、研究分担者が学務の都合により年度内に現地調査が実施できなかったこともあり、研究の進捗はやや遅れ気味であった。しかし2017年度は、計画通りほぼ順調に研究が進捗した。特に本研究の予算として最も多くを割り当てる予定をしていたインドにおける幸福度の大規模アンケート調査を計画通り実施することができ、本研究にとって非常に有用なデータの収集ができた。 また三野と川浦がが中心になって行っているインドの経済成長と産業構造の変化の関係、および選好の多様性と貿易構造の変化の関係に関する理論・実証研究に関しても概ね順調に研究が進捗した。理論モデルについては、インド経済の成長プロセスの特質を捉えるために、既存研究で使われてきた理論モデルをいかに修正するかが鍵になるが、多くの実証研究やデータの検討から、モデルの原型はほぼできあがっている。最終年度はそれらの研究結果をいくつかの論文としてまとめることに集中できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は本研究の最終年度であり、過去2年間に行った研究、および現在進行中の研究結果を総合して、インド経済の成長とインドの文化的多様性の関係を探るという本研究のメインテーマに関する研究成果をまとめることが最重要課題である。 まず現在八木が中心になり分析をしている幸福度に関するアンケート調査については、日印比較を中心にして意味づけをすると共に、不足するデータを補完するために、より規模の小さい調査を再度実施することを計画している。また田辺は本年度も現地調査を行い、データの充実を図る。三野と川浦は、それぞれのテーマであるインドにおける経済成長と産業構造の変化、金融市場の発展、および貿易構造の変化に関して理論・実証研究を行い、具体的に論文にまとめる作業を続ける。 なお当初の計画通り、本研究の成果をまとめた英文のモノグラフを研究期間終了後遅くならないうちに出版できるように準備を進める。モノグラフはSpringer 社と契約をしている同志社大学創造経済研究センターの英文叢書の1冊として出版する予定である。そのため直接の出版費用はかからないが、英文校正を業者に委託する費用を科研費から支出するため、本研究の代表者、分担者および一部の研究協力者の論文の原稿を2018年12月後頃までに集める計画である。またそれらの内容を報告するためのシンポジュウムを2019年の2月末頃までに同志社大学で開催することも計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度(2016年)の科研費の使用が7月からだったこともあり、2016年度は本研究の中心的な活動のひとつであるインドにおける大規模アンケート調査が実施できず、200万円以上の持ち越しが生じた。研究進捗状況の欄に記したように、本年度は予定通りの活動ができたたが、初年度の持ち越し分がまだ170万近く残った状態になっている。本年度は研究の最終年度なので、データをより充実させるためにアンケート調査と現地調査の追加実施を計画している。また本研究の成果をSpringer社の英文叢書として出版するための原稿の英文校正と出版内容に関連する研究集会の開催も予定している。持ち越し分は、これらの最終年度の研究総括に伴う活動への支出を補填するために使用する予定である。
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