研究課題/領域番号 |
16KT0100
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (60332524)
|
研究分担者 |
苣木 禎史 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (50284740)
西村 竜一 国立研究開発法人情報通信研究機構, ソーシャルイノベーションユニット耐災害ICT研究センター, 主任研究員 (30323116)
崔 正烈 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (60398097)
|
研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
|
キーワード | 防災 / 音声通信 / レジリエント / ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,屋外拡声システムを子局同士が動的に情報を伝達,共有し合うネットワークととらえ,一部子局が機能を失っても,システム全体でその機能を補いサービスエリア全体に聴き取りやすい音声情報を送信するように強化するものである。 平成28年度は本研究の初年度にあたることから,3年間を通して研究を行うために必要なデータ収集やプラットホーム構築を行うこととした。子局同士をネットワークとしてとらえた屋外拡声システム実験用プラットホームに関しては,子局と見立てたコンピュータを複数台用いて有線ネットワークを介して通信をする実験用プラットホームの試作システムの構築に着手し,子局間から発生される音声の提示開始タイミングを制御することで聴取点でのSN比の低減を抑えるアルゴリズムを提案した。また,聴取点で最適な音声情報を伝達する際に重要となる聴取環境の取得・分析という観点でも,実際の聴取環境の時間・日間変動を明らかにすべく,有事の際にも個々のユーザが持つデバイスでの情報取得を想定し,スマートフォンを用いた屋外環境常時測定を開始しており,次年度の詳細な分析に向けた準備が整ってきた。ロングパスエコーに頑健な音声伝達手法という点では,J-ALERT等の既存の緊急放送音声の文型を調査して試験用の摸擬音声が具備すべき要件を明らかにした上で,単語間ポーズ挿入によるロングパスエコー環境下でのロバストな音声伝達の効果を実験的に検証した。これらの成果は学術論文に採録されたほか,国際学会での招待講演や国内研究会での発表など,既に成果として評価され始めており,次年度に向けて順調に研究の準備が進んでいると考えている。 平成29年度は,これらの知見を元に,エリア全体での音声伝達を重視した最適子局選択手法などに取り組み,今年度の成果をより深化させていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実績の概要でも触れたとおり,プロトタイプシステムの構築,既存の緊急放送の分析とそれを用いたロバストな音声伝達手法の検討,聴取環境のリアルタイム分析に向けたデータ収集など,研究初年度に目標として掲げた内容は概ね達成できただけでなく,国際学会での2件の招待講演や国内学会での発表,および,学術誌論文への採録決定など,対外成果発表も当初の想定以上に行うことができた。 以上のことから,本研究は当初の計画以上に進展していると評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
研究が順調に推移しており,特に問題は見られないことから,当初の予定通り,実験用プラットホームの無線化,一部子局が機能しなくなった際の最適子局配置,音声出力アルゴリズムの構築,聴取環境適応型音声伝達アルゴリズムの開発などの課題を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初は聴取環境の精密測定の目的で屋外収音マイクシステムの購入を予定していたが,実際に有事の際には,聴取環境の精密な測定を行うためのシステム自体が機能しなくなる可能性があり,そのような場合には個々のユーザが所有する簡易型なマイクロホンシステム,すなわち,携帯電話やスマートフォンを活用することが有効であると考えたため,まずはこれらのデバイスを用いた聴取環境の取得を進めることとした。 その結果,初年度購入予定であった屋外収音マイクシステム,および,それに付随する周辺機器の購入を行わなくなったため,未使用額が発生したものである。
|
次年度使用額の使用計画 |
スマートフォン等での聴取環境に目処がつくようであれば,屋外収音マイクシステム自体は不要になるが,その分,個々のスマートフォン等から得られるデータの精度は期待できないため,多数の信号を用いた聴取環境高精度推定アルゴリズムの新たな開発が必須となる。未使用額はこの開発に必要な機材の購入に充てる予定である。
|