研究課題/領域番号 |
16KT0101
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西野 成昭 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (90401299)
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研究分担者 |
原 辰徳 東京大学, 人工物工学研究センター, 准教授 (00546012)
川中 孝章 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10644784)
竹中 毅 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究グループ長 (70396802)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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キーワード | 人工物工学 / 設計工学 / 情報化社会 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,期間全体を通じて,人工物ジレンマの解決に向けた人工物設計に関する方法論の構築を全体の目標としている.本研究課題で提唱する人工物ジレンマとは,デジタル化された情報が人工物自体から分離されることによって,人々に豊かさをもたらす一方で同時に様々な弊害を起こしうる現象のことを意味し,これは人工物創出における重要な見方であると同時に,今後の更なる情報化社会に向けて解決すべき本質的課題である.そこで,本研究課題の目標達成のため,具体的に,(1)スマート家電等のログデータの標準化問題,(2)人工物における情報セキュリティ問題,(3)プラットフォーム型ビジネスエコシステムの構成問題,(4)IoTにおけるデータ所有権と利用,(5)人工物の設計・使用情報と資源循環,の5つの具体的なテーマを設定し,本研究課題を推進している.前年度は,(1)から(3)の具体的テーマを主として取り組んだが,本年度もそれらを継続し,加えて,(4)と(5)のテーマに注力し研究を進めた.(4)については,予定通りに進まない部分もあったが,IoTにおける情報問題について検討を進める過程で,人工物からの情報分離という観点で一般化されたモデルへの着想を得ることができた.(5)の内容については,特にサーキュラーエコノミーのコンテキストでのモデル化を進め,製品の再利用だけでは無く,シェアリングなどのPSS型のビジネスモデルも含む構造のモデルが構築できた.さらに,単純な応用モデルとして複数のシナリオを設定し,シミュレーションにより分析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は(1)から(5)の個別のサブテーマを設定し,本年度は(4)と(5)のテーマを中心に進めたが,テーマ(4)については,具体的なIoT機器のデータを用いることを計画していたが,実データの入手に関して問題が生じ,当初の予定通りには進まなかったためである.代わりに,実データを使わず抽象化されたモデルとしての分析に終始したが,研究課題全体の進捗状況としては,やや遅れている状況にあると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度である次年度は,個別設定した5つのテーマの結果を集約し,人工物ジレンマを解決しうる人工物と情報のあり方について,一般化した知見として取りまとめる.なお,研究遂行上の遅れがあったために,研究計画の一部の変更を余儀無くされるが,十分対応可能なものであると考えている.最終的に,人工物ジレンマが生まれる根源的なメカニズムを説明可能な一般化されたモデルとしてまとめると共に,それらを解決しうる人工物設計の指針について総括する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の使用額が生じている理由は,既存備品で代替するなどの工夫により,特に研究分担者が予定していた出費を抑えることが出来たためである.金額としてはそれほど大きなものではないが,翌年度は人件費・謝金の増加が見込まれているため,その費用に充てる予定である.
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