研究課題/領域番号 |
16KT0103
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
高玉 圭樹 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (20345367)
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研究分担者 |
原田 智広 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (40755518)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | 進化計算 / プログラム / ビット反転 / ローバ |
研究実績の概要 |
本研究では,予期せぬ外的要因(センサ故障や環境変化など)及び内的要因(プログラムバグなど)に対して,宇宙機におけるコンピュータシステムを強化するために,宇宙線によるビット反転を利用したプログラム進化を展開し,システム強化を実現する機能設計の確立とその有効性の検証を目指す. その目的達成に向けて平成28年度では,(1)複数のビット反転であるMBU (Multiple-Bit Upset)に頑健なプログラム進化と,(2)ヒューマンエラーに柔軟なプログラム進化に取り組んだ.具体的には,(1)ビット反転が起こってもプログラムが壊れない頑健性を「乱れに耐える頑健性」の1つとして捉え,その要素技術として非同期進化法を確立した.次に,(2)プログラムに内在するヒューマンエラーに対応可能な柔軟性を「影響を和らげてやりすごす柔軟性」の1つとして捉え,その要素技術として探査重視型進化法を考案し,その有効性を示した. また,最終年度にはシステム強化を実現する機能を組み込んだ宇宙探査ローバを構築する計画となっているが,本年度はそのプロタイプを構築し,ローバを搭載したロケットによるサブオービタル(大気圏内)打ち上げ実証実験の予行を実施した.このローバはA Rocket Launch for International Student Satellites 2016にて,技術・ミッションの将来性が評価され,UNISEC賞を受賞しただけでなく,地上移動技術の新規性が認められてTechnology Awardも受賞した.また,学術的にはJournal of Control, Measurement, and System Integrationという英文誌に掲載された我々の論文がシステム・情報部門の論文賞に選ばれ,SICEのシステム・情報部門 学術講演会2016にて研究奨励賞も受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度では,システム強化を実現する機能として,(1)複数のビット反転であるMBUに頑健なプログラム進化と(2)ヒューマンエラーに柔軟なプログラム進化に取り組んだ. まず,(1)に関しては, MBUによってプログラムは常に変化し続け,かつ,プログラムごとに実行時間が異なることから,従来の同期型のプログラム進化では対処できないため,各プログラムを非同期に進化させる非同期型プログラム進化を探究した.特に,進化の対象となる解(プログラム)の性質とその評価時間(実行時間)の関係性がプログラム進化に与える影響を分析するとともに,非同期型プログラム進化に適した選択,削除法を考案し,その有効性を示した.さらに,非同期型プログラム進化における非同期性(解を同期する個数)を変更可能な半非同期型プログラム進化法も考案し,非同期性が最適化性能に与える影響を検証した.これにより,MBU環境下でのプログラム進化に必要な要素技術を確立した. 次に,(2)に関しては,宇宙という未知環境に対応可能なプログラムを事前に構築することには限界があるだけでなく,不完全な情報でのプログラム構築にはヒューマンエラーが内在しやすいため,人間が事前に考慮できなかった不足の事態に対処できるプログラムを自律的に構築する機構を探究した.具体的には,惑星を調査する宇宙探査ローバがスタックしたときに脱出させるプログラムに着目し,人間が事前に構築したプログラムではスタックから脱出できなかったときに,そのプログラムを変化させるとともに,適切なプログラムの組み合わせを探索する探査重視型進化法を考案し,実ローバで有効性を示すことに成功した.これにより,未知環境のために生じるヒューマンエラーに対応可能なプログラム進化に必要な要素技術を確立した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては,申請書に記載された計画を進めることを基本とする.具体的には,システム強化を実現する機能として,故障に対して強靭なプログラム進化に取り組む.具体的には,センサ類が故障しても目的を達成するプログラムを維持する強靭性を「大きく状態を変えつつも目的を達成する(目的"固定"指向型)強靭性」の1つとして捉え,その機能を探究する. 具体的な研究の推進方策としては,平成28年度に確立した複数のビット反転であるMBUに頑健な非同期型プログラム進化と,プログラムに内在するヒューマンエラーに対応可能な探査重視型進化を,故障に対して強靭なプログラム進化へと展開する.特に,プログラム進化手法の一つである遺伝的プログラミングにおいて,異なるセンサ情報を用いて目的を達成する準最適プログラム(最適プログラムを含む)を同時に複数獲得する手法を確立する.この目的に向け,遺伝的アルゴリズムの一分野である多峰性最適化の技術を遺伝的プログラミングに応用した手法を考案する.その評価としては,宇宙機での実ミッションを考慮したプログラムの進化に取り組むとともに,平成28年度と同様,構築した機能を組み込んだ宇宙探査ローバのプロタイプを構築し,ローバを搭載したロケットによるサブオービタル(大気圏内)打ち上げ実証実験の予行を実施し,その有効性を示す.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に日本に招聘する予定だった研究協力者であるKovacs氏(元ブリストル大学・英国)が体調不良となり,用意していた招聘費用(旅費や研究費など)を活用できなかったため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の招聘計画を平成29年度で実施することで予算を執行する.
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