研究課題/領域番号 |
16KT0104
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
門 勇一 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (90500223)
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研究分担者 |
岩月 勝美 東北大学, 電気通信研究機構, 特任教授 (00590522)
山田 博仁 東北大学, 工学研究科, 教授 (60443991)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | 3ポート電力ルーター / 自律分散協調制御 / 非干渉フィードバック制御 / ネットワークノード機能 / 伝達関数 / デジタルツイン |
研究実績の概要 |
主要課題(1)自律的マイクログリッドセル構成法の検討を進めた。自律的電力ネットワーク構築にはノードとしてSiCデバイスを用いて試作した10kW級の3ポート電力ルータを用いた。6台の電力ルータを用いてループ型トポロジーの小規模ネットワーク・テストベッドを試作し、機能検証実験を行った。先ず、スタンドアロンの電力ルータの非干渉制御法を確立したので、連結された電力ルータの制御法を確立するため、伝達関数の導出を行った。次に、この伝達関数を用いて、定電圧・定電流制御の安定性と高速時間応答を実現するため制御パラメータの最適化を図った。更に、3ポート電力ルータをノードとして使用し、様々なトポロジーのネットワークを設計できるように、3ポート電力ルータの変換効率、時間応答、及び接続情報をサイバー空間上で再現できるデジタル・ツインをモデル化した。これにより小規模ネットワークにおける電力フローのリアルタイムモニタリングが可能になった。今後、ネットワーク全体の電力供給能力や時間応答をシミュレーションできるプラットフォーム構築を目指す。 次に、主要課題(2)セル間のダイナミックな接続トポロジー変化に応じた連携制御法を確立するため、3ポート電力ルータの各ポートへの制御機能(定電流制御、定電圧制御、定電力制御、等)の割り当てをネットワーク内の状況変化に応じて自由に可変できる制御プログラムを開発した。更に、3ポート電力ルータは変圧器により直流的には絶縁されている特徴を活用して、3ポート電力ルータ間に新たな電力ルータを挿入するPlug-in & Playの機能を実現するため、安全を確保する制御シーケンスを検討し、制御プログラムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に基づき主要課題(1)自律的マイクログリッドセル構成法の検討、及び(2)セル間のダイナミックな接続トポロジー変化に応じた連携制御法について、順調に研究が進展した。 本研究テーマでは、直流的に絶縁されている3ポート電力ルータを自律分散協調型電力ネットワークのノードとして活用し、マイクログリッドセルを自律型基本単位セルとして設計し、基本単位セル間の相互作用による創発的シンセシスのプロセスを通して、システムの機能・仕様の再定義機能を発現させるアプローチを目指している。 その目的のために、3ポート電力ルータに求められる性能と機能を実現するため、相互接続された状態での伝達関数導出、各ポートへの柔軟な制御機能割り当て機能、上位の制御層とのインターフェイスとなるデジタルツインによるモデル化の検討を進めた。29年度は上記の項目についてについて基本技術を確立した。概ね順調に進展しているとする根拠である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では、主要課題(4)セル間の局所的相互作用とグリッド全体の機能・性能変化との関係のモデル化に取り組む。自律型セル間の局所的相互作用はグリッド全体の機能・性能に影響を与える。一方、グリッド全体の挙動は自律型セル間の局所的相互作用に影響を与える。電力フローの観点で言えば、局所的電力フローの最適解とグリッド全体での電力フローの全体最適解を両立させるために、両者の関係の関数表現を目指す。最後に、主要課題(5)システム内外のダイナミックな変化に対する創発的シンセシス機能の基本設計を検討する。災害後に、システム内外でダイナミックな変化が生じる。システム内では制御ユニット機能不全、電力ルータの故障や異常動作等の内部変化があり、外部環境では電力線の切断や短絡の発生のみならず、他の社会インフラも機能しなくなる。その状況下で、電力系統システムに求められるのはライフラインとして最低限の電力を供給する機能である。創発的シンセシスのプロセスとして、利用可能なリソースのサーチ、システムに要求される機能・性能の再定義、ダイナミックな接続トポロジー変更、及び平時と異なる制御アルゴリズムでのシステム駆動等を通して、その機能・性能を発展・進化させるプロセスを明らかにする予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の主要課題である「セル間のダイナミックな接続トポロジー変化に応じた連携制御法」の検証と平成30年度に予定している検討課題「セル間の局所的相互作用とグリッド全体の機能・性能変化との関係のモデル化検証」は同じシステムを使って検証予定でいる。両者に共通する実験はY字電力ルータを電力ネットワークのノード機能として活用し、Y字電力ルータの任意のポートを“不活性化”又は“活性化”し、セル間を電気的に“接続”又は“切断”することで実施する予定でいる。29年度は、この実験システムの仕様を明らかにする検討に時間を要したので、次年度使用額を発生させ、30年度の予算と合わせて、30年度に予定している検討課題を検討する実験システムの構築を予定している。
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