研究課題/領域番号 |
16KT0108
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
樋口 知之 統計数理研究所, -, 所長 (70202273)
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研究分担者 |
中野 慎也 統計数理研究所, モデリング研究系, 准教授 (40378576)
加藤 博司 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (70722536)
有吉 雄哉 統計数理研究所, データ同化研究開発センター, 特任研究員 (80735019)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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キーワード | 逐次データ同化 / 実験計画 / ベイズ最適化 / ビッグデータ / IoT / 社会インフラ / 人工物 |
研究実績の概要 |
データ同化とは、複雑な現象の高精度予測のために、数値シミュレーション計算と、不完全かつ部分的情報である観測・計測データを統合することにより、シミュレーションの初期値や境界値、パラメータ等を実際の現象をなるべく再現するように定め、時にはシミュレーションモデル自体にも手を加える(リモデリング)一連の計算作業である。本研究により、人工物システムの機能実現をオンライン的にサポートする理論的枠組み、つまり統合的逐次データ同化システムの数理的基盤を確立し、人工物(例えば、橋梁やトンネル)に多数配置されたセンサーの情報をリアルタイムで構造体シミュレータに取り入れるような、オープンな環境下での効率的な社会インフラ整備計画の立案に資する。今年度は、本課題と関連する国際的な先端研究所に所属する研究者等との意見交換を通し、統合的逐次データ同化の基盤構築に必要な数理要素技術の洗い出し、特に、モデリング技法と逐次データ同化の観点から情報収集を行った。これら数理基盤の構築をめざした課題の整理とともに、先進的センシング技術が計算モデルと統合されることによって得られる価値についても調査と研究チーム内で議論を行い、研究計画後半での応用プロトタイプの構築が具体的イメージをもって着実に進められるように準備的研究を実施した。人工物シミュレーションとデータ同化の接合において生じる問題 2-a)~c) の洗い出しに着手した:2-a) 開放形シミュレーションの逐次データ同化との整合化 2-b) 人工物シミュレーションにかかわる不確実性の定量化・指標化 2-c) 人工物シミュレーションモデル自体の評価法の整理。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
開発した手法を適用し数値実験を行うためのシミュレーションモデルの選定に時間がかかったことと、高性能グラフィックボードを搭載したデスクトップPCの購入を次年度に遅らせたことにより、理論面での成果が予想を上回った一方、実装面では満足できるレベルとは言えなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に調査した数理要素技術の俯瞰マップを作成する。統合的逐次データ同化の数理基盤研究においては、逐次データ同化手法の近似的高速計算法の開発により、オンライン計算性と拡張性の向上をねらう。また、橋梁やトンネルのような構造物にセンサーを多数設置した場合のセンサー情報を構造体計算にどのように同化させるかについての方法論を研究する。あわせて、機械学習・データマイニングの諸原理用いて統合的逐次データ同化の数理的基盤を拡張し、希少事象や多重世界の計算を含む問題へ逐次データ同化の適用範囲を拡大する。平成30年度には、研究代表者は社会インフラ維持管理のための一般的な数理モデリングに注力する。各研究者が担当する具体的応用テーマに対してプロトタイプの構築を開始する。現時点では、3つのテーマを想定している:3-a) 地盤工学のセンサーネットワークの高度化、3-b) 室内実験と流体シミュレーション環境の同時最適化3-c) 破片スペースデブリのモデル化。3-a)では、構造体シミュレーションに適した逐次データ同化法の研究に取り組む。3-b) では、擬似室内実験データを用いて、流体シミュレーション内の不確実性をなるべく高速に同定する計算アルゴリズムの開発に取り組む。3-c)では、破片スペースデブリの散乱状態の観測モデルをもとに、状態を時々刻々追尾する計算システムの開発を進める。応用テーマに携わるメンバーは、モデルの信頼性評価の研究にもあわせて従事する。最終年度は、応用テーマに携わるメンバーの計算の大規模化も協力して進める。学習アルゴリズムの工夫により、プロトタイプの性能の改善に取り組む。適切なセンサー情報の獲得および入力の方法についても検討する。関連する分野の識者を招聘しワークショップを開催することで、本研究の総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は海外出張や国際会議の参加により情報収集を行う計画であったが、面談を予定していた研究者がたまたま来日していたため、海外出張等にかかる経費が発生しなかった。購入を予定していたデスクトップPCより高性能のグラフィックボードを搭載したPCの発売を待った方が研究計画全体上は適切と判断したため、初年度はその購入を見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度から雇用の予定である研究補助(1人×12ヶ月)の経費に充当する予定である。
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