研究課題
昨年度までに、メラノコルチン4型受容体(MC4R)欠損マウスを用いた2種類のNASHモデル(慢性モデル、誘導性モデル)を確立し、肝組織マクロファージ(クッパー細胞)が形質転換することにより組織線維化の起点となるcrown-like structure(CLS)を形成することを明らかにした。MC4Rは視床下部を中心とする中枢神経系に局在し、肝臓には発現が認められないため、MC4R欠損マウスにおけるNASHの発症に中枢性のシグナルが関与することが示唆される。そこで本年度は、野生型マウスにMC4R阻害剤(SHU9119)を脳室内投与することにより、CCl4で肝臓に一過性に誘導される炎症反応に及ぼす影響を検討した。すると、浸潤マクロファージの総数に変化は認められなかったが、SHU投与によりLy6C(lo)/Ly6C(hi)比が顕著に上昇することを見出した。この時、肝臓における障害組織のクリアランスが低下し、炎症が遷延化した。同様の結果は、MC4R欠損マウスでも観察された。さらに、慢性炎症の回復過程を検証した。即ち、高脂肪食を負荷した野生型マウスに対して食餌制限により減量治療を施したところ、14週間後までにほぼ炎症反応は正常化したが、MC4R欠損マウスでは改善が認められなかった。また、CCl4 8週間投与による肝線維化からの回復過程を同様に検討したところ、MC4R欠損マウスでは、回復期に出現するLy6C(lo)マクロファージが野生型マウスより遅れて出現し、より増加した。以上の結果より、中枢MC4Rシグナルは、末梢の炎症回復過程に影響を及ぼし、特にマクロファージの質の変化に関与することが明らかになった。
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