研究課題
ヒトには、常に体の環境を健常状態に維持する機構が備わっている。これは生体の恒常性維持機構と呼ばれ、病気の発症とはこの健常状態から疾病状態へ推移する事である。例えば急性ウイルス感染の場合、一過性の炎症応答・組織障害が生じるものの、通常、生体は健常状態に戻る。致死的なウイルスに感染した場合、生体システムは不可逆的な破綻を起こす。一方、慢性ウイルス感染の場合、ウイルスが自然に排除される事はまれで、多くは長期的に体内に保持され、生体は異なる安定状態(疾患状態)を維持する。この疾患状態は、抗ウイルス薬の投与によって人為的に健常状態へと戻す事も可能である。他方、いくつかの慢性ウイルス感染では、抗ウイルス薬を用いてもウイルスを排除できず、健常状態に戻す事は出来ない。本研究では、1)ウイルス感染下における生体の恒常性維持・変容を生体システムの変化や破綻の観点から定量的に理解する; 2)疾患を統合的に理解し、それを制御する方法を提案する、ことを目的とした。本課題では、2000-01年にウガンダで発生したエボラウイルス感染患者の血中ウイルス量を数理解析し、ウイルス増殖機構と現行の抗エボラウイルス薬の効果を定量的に明らかにした。また、C型肝炎に対する治療薬の効果的な組み合わせを数理的に解析し、現行の治療薬の組み合わせと比較して薬剤耐性ウイルスの出現リスクを大幅に下げられる3剤の組み合わせを見出した。さらにヒト化マウスを用いてHIV感染初期におけるウイルスタンパク質と内因性免疫の競合を定量的に明らかにした。このように異なる病態を示すウイルス感染症をモデルとして、生体の恒常性維持・変容を生体システムの変化や破綻を定量的に理解することができた。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件)
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