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2017 年度 実施状況報告書

新規レポーターシステムを用いて解き明かす炎症性疾患の発症と寛解のメカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 16KT0114
研究機関国立研究開発法人国立国際医療研究センター

研究代表者

関谷 高史  国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 肝炎・免疫研究センター 免疫制御部 免疫応答修飾研究室長 (80519207)

研究期間 (年度) 2016-07-19 – 2019-03-31
キーワード自己免疫疾患 / T細胞 / レポーターシステム
研究実績の概要

免疫システムは、Thによる正の応答と、Tregによる負の制御のバランスが的確に維持され、恒常性が保たれている。このバランスの破綻は、本研究対象である炎症性疾患を始め、様々な疾患の要因となる。しかし、このバランスの破綻の引き金はどう引かれるか、また、このバランスの崩れはどう増幅され、症状として現れるに至るのかという疑問点に対し、十分な答えは得られていない。本研究は、活性化初期段階の免疫細胞を特異的に標識する新規レポーターマウスを作製し、解析を進めることで、炎症性疾患の発症や自然寛解のメカニズムをステージを追って解明し、ひいては診断マーカーや治療標的の同定を目指す画期的な試みである。
前々年度までの研究では、BACトランスジェニックベクターを構築し、レポーターマウス作製に着手した。そして前年度は、作製が完了したレポーターマウス末梢血からリンパ球やマクロファージを単離し、細胞レベルでレポーター分子の発現確認および動作確認を行った。その結果、14系統誕生したレポーターマウスのうち、3系統でレポーター分子の望ましい発現量が確認された。このレポーター分子は生体内イメージング用のルシフェラーゼとFACS解析用のGFPの融合分子であるが、ルシフェラーゼ活性は実にバックグラウンドの数万倍の活性を示し、生体内イメージングで検出できるレベルであることが示された。GFP蛍光の方も、上述3系統でバックグラウンドピークと完全に分離されるレベルの強度であることが確認された。さらに、本レポーター分子は免疫細胞全般で活性化後に一過性の発現を示すNr4a1遺伝子座に組み込んであるが、その発現はNr4a1遺伝子の発現を忠実に再現しており、今後のマウス個体を用いた実験でも活性化初期段階の免疫細胞を特異的に標識することが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、新規レポーターマウスを作製する段階が最も困難であることが予想されていた。レポーター分子は生体イメージングおよびFACS解析の両方を可能にする前例のないものであり、さらに活性化初期段階免疫細胞をグローバルに標識するレポーターマウスも前例の無い先駆的なものであるからである。従って、本レポーターマウスの作製を完了し、さらに、予想していたものよりもより強くレポーター分子を発現するマウスが作製されたことが確認されたため、本研究は順調に進展していると評価できる。

今後の研究の推進方策

活性化初期段階免疫細胞を生体イメージングおよびFACSで検出できるレポーターマウスの作製が完了したため、本マウスを用い炎症性疾患モデルの解析を開始する。検討は、以下に示す3種類の炎症性疾患モデルを用いて進める。
1. 実験的脳脊髄炎(EAE)による検討:本疾患モデルはヒト多発性硬化症のマウスモデルである。寛解に至るマウス、増悪化を示し死に至るマウスなど、個体によって様々な病態を示すが、その原因は不明である。そこで本研究では、EAEの発症操作を行った後、2-3日置きにルシフェラーゼ基質をマウスに投与し、免疫応答の活性化の場を経時的にモニタリングする。寛解に至るマウス、増悪化を示すマウスで異なったパターンを示した組織が検出された場合は、当該組織から細胞を取得し、GFP蛍光を頼りに活性化免疫細胞を取得する。取得した細胞プールは1細胞に分離し、single cell RNA-seqにより、各細胞の遺伝子発現を解析する。発現解析データは、クラスタリング等を応用することで、活性化細胞を分類する。続いて、分類された各細胞サブセットを個別に解析することで、疾患を寛解もしくは増悪化に導く細胞種を同定する。さらに、同定された細胞種の発現解析データを基に、寛解もしくは増悪化に導く原因分子の同定も試みる。
2. 炎症性腸疾患や移植片対宿主病(GvHD)による検討
炎症性腸疾患はレポーターマウスから取得したCD4T細胞を免疫不全マウスに移入することで発症させる。GvHDはレポーターマウスから取得した骨髄細胞とT細胞を放射線照射した異系統BALB/cマウスに移入することで発症を誘導する。上述EAEと同じ解析方針で検討を進め、それぞれの疾患の寛解もしくは増悪化に導く免疫応答の場、細胞種、原因分子の同定を目指す。

次年度使用額が生じた理由

29年度に生体イメージングに使用するため購入予定であった試薬の購入、および細胞解析の受託解析を30年度4月、5月に変更した。受託解析は既に行っており、試薬の購入も直ぐに行うため、当該金額は使用される予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Generation of alloantigen-specific induced-Treg stabilized by vitamin C treatment and its application for prevention of acute graft versus host disease model2017

    • 著者名/発表者名
      Hidenori Kasahara, Taisuke Kondo, Hiroko Nakatsukasa, Shunsuke Chikuma, Minako Ito, Makoto Ando, Yutaka Kurebayashi, Takashi Sekiya, Taketo Yamada, Shinichiro Okamoto, Akihiko Yoshimura
    • 雑誌名

      International Immunology

      巻: 29 ページ: 457-469

    • DOI

      10.1093/intimm/dxx060

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Notch-mediated conversion of activated T cells into stem cell memory-like T cells for adoptive immunotherapy2017

    • 著者名/発表者名
      Taisuke Kondo, Rimpei Morita, Yuumi Okuzono, Hiroko Nakatsukasa, Takashi Sekiya, Shunsuke Chikuma, Takashi Shichita, Mitsuhiro Kanamori, Masato Kubo, Keiko Koga, Takahiro Miyazaki, Yoshiaki Kassai, Akihiko Yohimura
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 8 ページ: 15338

    • DOI

      10.1038/ncomms15338

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [図書] Epigenetics of Autoimmunity2018

    • 著者名/発表者名
      Takashi Sekiya
    • 総ページ数
      432
    • 出版者
      Elsevir
    • ISBN
      9780128099285

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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