研究課題/領域番号 |
16KT0116
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
植田 幸嗣 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター がんオーダーメイド医療開発プロジェクト, プロジェクトリーダー (10509110)
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研究分担者 |
長山 聡 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器外科, 医長 (70362499)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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キーワード | プロテオミクス / 腫瘍マーカー |
研究実績の概要 |
本研究は大腸癌の治療成績を有意に向上させ、かつ患者に優しい個別化医療の実現を最終目的として(1)術後再発高リスク群予測因子(2)再発・遠隔転移パターン規定因子の解明を目指す。 平成29年度は、がん研有明病院消化器外科にて診療を行った大腸癌患者血漿サンプルについて、術前、術後、再発時、再発術後の4ポイントで採血された検体を採取し、以下の解析を行った。 当初予定していた抗体カラム(MARS Hu-14)による血中多量タンパク質除去を起点とする血漿プロテオーム解析の結果と比して、過去に研究代表者が開発した血中低分子量タンパク質抽出法QUEST-MS (J Proteome Res. 2013;12(10):4497)を用いた同解析結果においてより網羅性(タンパク質同定数)、および深度(低絶対濃度タンパク質検出率)の高い分析が可能であることが実験的に明らかとなったため、本研究における血漿タンパク質解析には後者を採用することとした。 120症例由来4ポイント血漿、計480サンプルについてQUEST-MS処理後、Orbitrap Fusion Lumos質量分析計にてプロテオーム解析を行った。その結果4,712タンパク質がProteome Discovererソフトウェアにおける有意基準(FDR <1%)を満たして同定された。さらにMaxQuantソフトウェアによる定量解析、統計解析を行った結果、21、9、14タンパク質がそれぞれ大腸癌術後1年以内早期再発、肝転移、肺転移症例群において有意に(t-test, p < 0.05, fold-change > 5.0)血中濃度亢進を示すことが分かった。 当結果と前年度取得した組織検体解析結果、そして各種臨床情報と統合することにより、最終的な臨床病態決定因子の抽出と予測診断モデルの構築を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた経時採取血漿の定量プロテオーム解析を完了し、質量分析Raw dataからの全タンパク質定量化計算処理、統計解析による病態規定候補因子の抽出まで終了することができた。引き続き各種臨床情報(年齢、性別、生化学検査値、腫瘍マーカー値、病理所見、治療歴、その他)を統合した多変量を用いて予測診断アルゴリズムの構築が進行中であるが、一連の分析系の立ち上げ、臨床検体の探索的分析の完了などおおむね想定通りの進捗スピードで推移していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに取得した大腸癌患者組織検体、および血漿検体の質量分析による網羅的定量プロテオーム解析結果と各種臨床情報をもとに、早期再発リスク因子、術後補助化学療法感受性予測因子、好転移臓器予測因子の統計学的抽出を行う。その後、ハイスループットイムノアッセイや高速定量質量分析法を用いた再発リスク因子タンパク質の定量的検証試験を行う。同検証試験の測定結果と付随する臨床情報を元に最終的な早期再発リスク診断モデル、術後補助化学療法感受性診断モデル、好転移臓器予測モデルを構築する。また、検証試験にて大腸癌再発リスク関連因子と決定づけられたタンパク質に関しては、POC取得を目的とした個別の機能解析実験に供する。
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