研究課題
本研究は大腸癌の治療成績を有意に向上させ、かつ患者に優しい個別化医療の実現を最終目的として(1)術後再発高リスク群予測因子(2)再発・遠隔転移パターン規定因子の解明を目指す。2018年度は、昨年度までの網羅的定量プロテオーム解析から上記バイオマーカー候補となり得るタンパク質群として同定された各因子を用いた診断モデル構築を試行した。検出された全タンパク質について術後1年以内再発群(n = 20)と5年以上無再発群(n = 20)間でWilcoxon順位和検定を行い、有意差の認められた37タンパク質を用いてUnsupervised clustering解析を行ったところ、術後再発あり、再発なしの二群を統計学的に分類可能であった。また、37タンパク質のうち再発あり症例群でタンパク質発現量が上昇を示す20タンパク質を用いてSupport Vector Machineによる診断精度評価を実施したところ、感度95.0%、特異度84.6%、陽性的中率85.0%、陰性的中率94.4%を示し、非常に高い精度で術後再発リスクを診断しうる血中タンパク質バイオマーカー候補群であることが確認できた。これらのタンパク質に対して、抗体を用いたマルチマーカー測定系は時間的、経済的、そして臨床実用性に乏しいため、計画通りトリプル四重極型質量分析計を使用した高速絶対定量法である Multiple Reaction Monitoring (MRM)法を用いて多点経時採取検体検証試験に移行した。本年度はそれぞれのバイオマーカー候補タンパク質をMRM法で特異的に検出するための至適トリプシン消化ペプチド配列の選定まで実施した。今後MRM分析によって得られる経時的な各種血中タンパク質の絶対定量値変動データと付随臨床情報と統合することにより、最終的な臨床病態決定因子の抽出と予測診断モデルの構築を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
予定していた定量プロテオーム解析を完了し、大腸がんの術後早期再発を規定しうる血中バイオマーカー候補タンパク質群の抽出、それらを用いた統計学的診断モデルの作製、評価まで終了することができた。引き続き経時採取検体の測定結果と各種臨床情報(年齢、性別、生化学検査値、腫瘍マーカー値、病理所見、治療歴、その他)を統合した多変量を用いて予測診断アルゴリズムの検証が進行中であるが、一連の探索的分析の完了などおおむね想定通りの進捗スピードで推移していると言える。
本年度までに取得した大腸がん早期再発規定因子に対してMRM分析によるハイスループット絶対定法を立ち上げ、多点経時採取検体検証試験を行う。同検証試験の測定結果と付随する臨床情報を元に最終的な早期再発リスク診断モデル、術後補助化学療法感受性診断モデル、好転移臓器予測モデルを構築する。また、検証試験にて大腸癌再発リスク関連因子と決定づけられたタンパク質に関しては、POC取得を目的とした個別の機能解析実験に供する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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