研究課題
本研究は国内において部位別がん罹患数、死亡数がそれぞれ第1位、第2位を占める大腸がんに対して、予後規定因子となり得るバイオマーカー分子群を同定し、早期再発に関する分子メカニズムの解明と共に革新的な診断法の開発に繋げることを目的とした。研究期間前半では組織、血漿検体を用いた網羅的定量プロテオーム解析を実施し、前述バイオマーカー候補分子群の抽出を行った。大腸がん術後1年以内再発例(n = 20)を早期再発群、5年以上無再発例(n = 20)を無再発群と定義し、手術時における組織、血漿検体からタンパク質を抽出し、最先端の質量分析技術を駆使したプロテオーム解析に供した。検出された全タンパク質について上記2群間でWilcoxon順位和検定を行い、有意差の認められた37血漿タンパク質を用いてUnsupervised clustering解析を行ったところ、二群を統計学的に識別可能であることが分かった。さらに、37タンパク質のうち早期再発群でタンパク質発現量が上昇を示す20タンパク質を用いてSupport Vector Machineによる診断精度評価を実施したところ、感度95.0%、特異度84.6%を示し、非常に高い精度で術後再発リスクを診断しうる血中タンパク質バイオマーカー候補群であることが確認できた。これらのタンパク質に対して、今年度はトリプル四重極型質量分析計を使用した高速絶対定量法である Multiple Reaction Monitoring (MRM)法を用いて多点経時採取検体検証試験を実施した。MRM分析によって得られた経時的な血中20タンパク質の絶対定量値変動データと付随臨床情報をもとにしてロジスティック回帰分析を行い、最終的に4タンパク質の術前血中濃度を使用する診断式にて、再発高危険度群、低危険度群の高精度な予測診断が可能なモデルを構築することができた。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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