研究実績の概要 |
HLA(human leukocyte antigens:ヒト白血球抗原)遺伝子はさまざまな免疫系疾患の感受性遺伝子であり、自己免疫疾患、感染症、腫瘍免疫、薬剤副作用(薬疹)等と強く関連する。HLAは自己・非自己ペプチドを提示し獲得免疫応答に関わることから、HLA遺伝子の多様性は個人間の疾患感受性の違いを生み出す主要因の一つであると考えられている。しかし、HLAとペプチドとの相互作用の強さをアリル間で定量的に比較することは従来のHLA-ペプチド結合アッセイでは困難であった。そこで本研究では、HLA-ペプチド発現アッセイ系(Miyadera et al. (2015) J Clin Invest)を用いて、多数のHLAとペプチド間の相互作用を体系的に解析し、各HLAアリル産物のペプチド結合プロファイルと、そのアリル間の違いを明らかにすることを目的として研究を進めている。この過程でHLA-ペプチド発現アッセイの高速化にも取り組んできた。平成28年度はアッセイを高速化するためフローサイトメータによる測定とイメージングサイトメーターによる測定とを比較した。その結果、定量性という点でフローサイトメータの方が優れていたため、平成29年度はフローサイトメトリーを用いた解析を行うこととした。平成29年度にアッセイを効率化するためにオートサンプラー付のフローサイトメーターを導入し、主に外来抗原を対象としたHLA結合アッセイを行った。また、HLA-ペプチド発現アッセイを評価・検証するため、既知のT細胞エピトープを含む外来抗原(9種類のペプチド)と、HLA-DRB1 (9種類), DRB3,4,5 (5種類), DQ(7種類)との結合性を網羅的に測定し、このアッセイ系によってT細胞エピトープ領域を検出できることを確認した。これらの結果について論文投稿を準備中である。
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