研究課題/領域番号 |
16KT0130
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西浦 博 北海道大学, 医学研究院, 教授 (70432987)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | 数理モデル / 感染症 / 疫学 / 危機管理 |
研究実績の概要 |
感染症流行の数理モデルを活用した研究の中でも、流行途中の分析や予測を実施するリアルタイム研究が最近までに盛んに実施されており、それは先進諸国において数理モデル研究の数ある応用研究の中で最も実装に成功しつつある研究分野である。新型インフルエンザ2009やエボラ出血熱、MERS(中東呼吸器症候群)などの流行研究の機会を契機に、リアルタイム研究レスポンスに関する研究が爆発的に増加し、欧米やアジアのいくつかの都市(香港・シンガポールなど)では数理モデルを利用した流行データの分析を素早いスピードで実施可能にすべく、研究拠点体制が整備されつつある。本研究は、数理モデルを流行前から準備するという意味でプレモデリング(PREMODELLING)と称する研究計画である。その目的は、感染症流行時に、日本独自のリアルタイム研究体制に基づく研究レスポンスを達成するために、リアルタイム流行分析に特化した数理モデルの構築と観察データの収集、統計学的分析に関して方法論的な研究基盤を確立することである。初年度のジカ熱の流行に関するリアルタイム研究成果に加え、2年度目はマダガスカルでの肺ペスト流行やイエメンでのコレラ流行に関して予測や感染性推定、感染対策評価に取り組み、それらを原著論文として発表することができた。また、終了に向けてプレモデリング体制が確立することを受け、流行発生時の観察データの分析を実施すべく研究体制を構築することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マダガスカルにおける肺ペスト流行やイエメンでのコレラ流行、バングラデシュにおけるジフテリア流行など、突発的な流行を通じた研究機会に恵まれ、当初の予定以上にケーススタディーを積み重ねて報告することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
研究は3つの大項目による段階的プロセスで構成している。それは、(1)既知のリアルタイム研究手法を発展させる段階、(2)革新的なリアルタイム数理モデル研究を創出する段階、(3)研究の実装(応用)と成果発表と平行して社会実装を実施する段階、である。最終年度におけるプレモデリングの体制活用に加えて、感染性推定研究では、病原体ゲノム情報、ミクロ地理情報および疫学情報以外の要素(動物との接触情報)を加味した再生産数の導出と推定デザインの考案を行う。重症度研究では、人口レベルの血清学的調査および超過死亡者数のリアルタイム推定の枠組みを構築し、感染時致命リスクのリアルタイム推定を実施する予定である。
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