研究課題/領域番号 |
16KT0133
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小布施 祈織 岡山大学, 環境生命科学研究科, 特任助教 (90633967)
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研究分担者 |
坂上 貴之 京都大学, 理学研究科, 教授 (10303603)
島内 寿徳 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (10335383)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | Stokes方程式 / ナノマシン / ドラッグデリバリー / 埋め込み境界法 / 数理モデリング / 応用数学 / 数値計算 |
研究実績の概要 |
1.アミロイドβの凝集による伸長過程および成長場所の固定化おいて,脂質誘導体Aβ1-17-SS-C17 が作用しており, 標的性の観点から優れていることを実験において確認した。(島内が担当) 2.上記の実験(2)で得られた結果に対応する数値実験のため, アミロイドがN個凝集した棒状の集合体へのアミロイド単体の凝集過程をモデル化し,数値計算プログラムを作成した。相互作用にはLennard-Jonesポテンシャルを用いてみたが, このポテンシャルでは1の実験結果と整合的な結果は得られなかった。ポテンシャルの形状の操作により, 1の実験結果と整合的な数値実験結果を得ることはおそらく可能であるが, その中において物理的に意味を持つポテンシャルを見出し設定するための作業を進めているところである。(小布施・坂上が担当) 3.血管を摸した領域内において複数個のナノマシンがStokes流体を流れる数値シミュレーションを行うため,埋め込み境界法を用いた数値計算プログラムを作成した。H28年度の段階では,血管は直方体であり球状同一ナノマシンが複数個考慮されていたが,H29年度には微小な孔のあいた非直方体の血管に拡張した。現在, この数値計算プログラムを用いて, 数値シミュレーションを進めている。(小布施・坂上が担当)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では, 埋め込み境界法を用いた数値シミュレーションによりナノマシンの血管内自走特性および遊走特性の数理解析を行い, さらに数値実験と実験室実験の連携により, 高機能な送達担体の探索および優れたドラッグデリバリーを実現するためのナノマシンの設計提案を目指す。
送達担体に関する実験室での実験はおおむね順調であるが, それに対応する数値実験の際に用いる適当かつ物理的に意味のある相互作用や境界条件などの設定を見出すことが難しく, 数値実験はやや遅れ気味である。また, 数値実験で得た一部のデータを誤って削除してしまい, データ再構築が必要となったのも遅れの原因である。
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今後の研究の推進方策 |
1.血管形状・血液の流れをさらに実際のものにより近い状況へと修正し,実験室実験により得られたナノマシン基礎特性を基に,ナノマシンや血液構成物の挙動設定を数値シミュレーションのプログラムに組み込む。また,このプログラムを用いて数値シミュレーションを行い, 血管内のナノマシン遊走特性の数値的データをとり, 実験室の実験で得られた結果との比較検討を行う。 (小布施・坂上が担当) 2.孔のあいた2次元並行流路と1つの円形ナノマシンを考え, 流れにシアが存在する場合について, ナノマシンの挙動を記述する数理モデルの作成を試みる。ここでの設定は2次元であり, 現実の系や行っている数値シミュレーションの設定とは異なるが, 解析的な問題の扱いであることにより, 血管内ナノ粒子自走特性に対するより明確かつシンプルな示唆を得る可能性がある。(小布施が担当) 3. 来年度も継続してより高機能な送達担体の探索およびナノマシンの粒径を30~100 nmに制御することを目指す。また,ナノマシンの表面物性をより広範囲の温度条件や脂質組成の条件で測定を継続する(島内が担当)。次に, 小布施らの数値計算で得られた指針に基づいて, 血管内の流動特性の実験的検証のための基礎実験を進める。(島内が担当)
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次年度使用額が生じた理由 |
数値シミュレーションによる結果をまとめるところまで到達できなかったため, 国際シンポジウムなどでの研究発表に関する旅費のための研究費をH30年度に繰り越した。
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