研究実績の概要 |
血管を模した穴のある円筒内において, ナノマシンおよびナノマシンを排除する機能を有する血液成分を表現する二種の物体が血流に従って運動する数値実験を行った。ナノマシンの表面修飾は埋め込み境界法による固体表面のぼやけにより表現しており, 固体表面の記述に用いる関数およびパラメータ, さらにはナノマシンと血管壁に存在するの穴の比などに注目し, 血管壁の穴を抜けて標的細胞へと到達する可能性の高いナノマシンの設定を評価しようと試みた。血管壁の穴とナノマシンのサイズが同程度であるときにナノマシンが穴を通過する確率が高い可能性が示唆されたが, パラメータ設定などに意図的な決定があったため, よりニュートラルなパラメータ設定において再度データを生成中である。
より基本的な, 複素解析を用いた数理モデルの作成と数値実験も試みた。一か所に穴の開いた無限壁で作られる半無限平面内に2次元せん断流を仮定し, その中におけるパッシブな物体の2次元運動の記述を行い, 得られた方程式を用いて数値実験を行った。半無限平面内外での圧力差および穴と物体の直径比に依存して, 物体が穴を通過する場合が見られたが, 実際のナノマシン設計に適用できるほどの強い結果は得ることができなかった。
ナノマシン作成のために実験においては以下の成果が得られた。チオール誘導体とシステイン間Lys結合脂質を含むリポソームの形成が確認された。この手法は残基数の少ないAβだけでなく残基数の多いLysにおいても適用可能であった。次に,作成したAβやLys提示リポソームにはそれぞれAβアミロイドやLysアミロイドへの標的性があることが示唆された。最後に,本来の目的であるAβアミロイドの可溶化を検討した。その結果,提示リポソームに可溶化試薬を封入することにより,効果的な可溶化に成功した。この結果は現在, 論文投稿の準備を進めているところである。
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