研究成果の概要 |
血管を模した穴のある管内において, ナノマシンおよびナノマシン排除物質を表現する物体が血流に従って運動する数値実験を行った結果, 血管壁の穴とナノマシンのサイズが同程度であるときにナノマシンが穴を通過する確率が高い可能性が示唆された。 基本的な数理モデルの作成として,穴の開いた壁で作られる半無限平面内に2次元せん断流を仮定し,パッシブ粒子の2次元運動を, 複素解析を用いてモデリングし, 穴を通過する確率の数値実験を行った。血管を模した領域(異なる境界条件が繰り返される壁を持つ管)においてせん断流と微粒子が存在する場合について考え,transform methodを用いて微粒子の挙動解析を試みた。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
近年, ナノマシンと呼ばれる疾患治療能力を有するナノ微粒子を用いた, 安全かつ効率の良い疾病治療が推進されている。しかしながら実験現場でのナノマシンの設計,作成,および特性評価の指針は, 膨大な試行錯誤の蓄積と経験であり,それゆえ新たな数理的視点からの方法論が求められている。 本研究課題では, 数理流体力学と医工学の連携により, 一般的な実験設定に対応可能で, 時間的予算的な意味でより効率的な, ガン治療用ナノマシンの自走特性および血管内遊走特性の数理的解析を行った。得られた知見は血管内ナノマシン基本的特性に関する数理的知見を得るとともに高性能ナノマシン設計への数理的立場からの提案へとつながる。
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