研究課題/領域番号 |
16KT0134
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
末谷 大道 大分大学, 工学部, 教授 (40507167)
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研究分担者 |
矢尾 育子 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 准教授 (60399681)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | 質量分析イメージング / 機械学習 / 多変量データ解析 / 神経変性疾患 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
初年度では、まず、野生(WT)型とノックアウト(KO)型について各一個体につき2検体ずつ脳切片試料を準備し、その質量顕微鏡イメージングデータを取得した。基本的な統計的性質を調べ、空間平均したスペクトルデータに関してはWT型、KO型双方に大きな違いは見られないことを確認した。また、その確率分布を見るとー1乗のベキに従うといういわゆるジップ則が見られることが分かった。これらを確認した上で以下の解析を行った。 ・主成分分析および多様体学習 スペクトルデータが強い非ガウス性を持つため、事前にデータを平行移動+対数変換した上で主成分分析(PCA)を行った。その結果、第1軸によって大脳前頭部、第2軸によって白質、第3軸によって脳切片外の脳内物質とは関係のないマトリクス由来の物質が分類できることが分かった。さらに、非線形構造を見るためにisomapなどの多様体学習(カーネルPCAと見なせる)を適用した。その結果、通常のPCAでは見られない微細な構造が確認された。 ・正準相関分析およびその拡張 正準相関分析(CCA)では相手となる多変量データが変わると変換も変化する。そこで、全てのデータをまとめて相関係数の重みつき和を最適化する一般化CCAを用いることを考え、さらに「WT同士あるいはKO同士は相関を高く、WTとKOの間の相関は低く」という付加情報(ラベル)を一般化CCAの重み係数に反映させた拡張手法を提案した。その結果、生物・医学的解釈はできていないものの、WTとKOで傾向の異なる物質の候補を探索することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般化CCAを拡張することにより、切片試料に付随するラベル情報(WTやKO型)を反映させた方法を提案できたことは大きな進展であった、しかし、現在解析に用いているサンプルが4検体のみで、提案手法の有効性を確認するためには適用事例を増やす必要がある。また、質量スペクトルが持つ本質的な非ガウス性や脳の形態的特徴など対象独自の性質に合わせた手法の提案に至ってない。代表者は学会発表などを未だ行っていないので次年度では積極的に活動したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
手法面については、現在までに作成したプログラムでは大規模データに対処しきれていないため、その改良を行う。その上で非ガウス性を考慮した手法の修正を行う。具体的にはBox-Cox変換などの元データをガウス分布に近づける事前処理、あるいはカーネル法の適用を想定している。また、一般化CCAについてはTenenhausらがスパース化への拡張も提案しているので、データが大規模化した際への対策として彼らの方法を参考にする。 解析対象とするサンプル数を増やす。WTマウスとKOマウスの質量スペクトルを比較する。KOマウスでの変化が確認された場合に生体内組織の何の物質であるか同定し、神経変性疾患を予測する上で妥当な物資であるか評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者・分担者・研究協力者間で研究進捗状況を打ち合わせする計画を立てていたが、代表者と分担者の年度末の学内用務のためスケジュール調整ができなかった。また、分担者が28年度に予定していた人件費の支出を29年度に見送ることにしたため、繰り越す必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度の研究進捗状況の報告および今後の方針に関する打ち合わせについては5月中に実施する。分担者の補助員を雇用する。
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