研究課題/領域番号 |
16KT0135
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
出原 浩史 宮崎大学, 工学部, 准教授 (50515096)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | パターン形成 / 数理モデル / ミクロとマクロ / 応用数学 |
研究実績の概要 |
自然界に見られる多くの現象は、階層構造を有している。生命現象においては、細胞が集まり組織や器官となり、それらの集合が個体を形成する。古くから複雑な物事でも、それを構成する要素に分解し個別の要素を理解すれば、全体の性質や振る舞いを理解できると思われていたが、ミクロの情報から、予想できない振る舞いがマクロに現れることが認識されるようになり、その理解には、異なる階層をつなぐ新たな手法の確立が必要となっている。 本研究課題で着目しているバクテリアである大腸菌の運動は直進運動と方向転換を交互に繰り返すという単純な運動形態であるが、これらを養分が含まれている寒天培地上で培養するとマクロでは非常に規則正しいコロニーパターンを形成することが知られている。個々の大腸菌がどう行動すべきかを命じている司令塔のような制御機構は存在しないにもかかわらず、自己組織的にコロニーパターンの創発をもたらしていることから大きな注目を集めてきた。 これまでこのような規則正しい大腸菌のコロニーパターンの形成メカニズムを解明しようと様々な研究者によって様々な数理モデルが提唱されてきた。本年度は、最も単純なバクテリアの集合現象を記述するケラー・シーゲルモデルに着目し、それに対応する反応拡散系を導出した。これまでは交差拡散と呼ばれる方程式に対して反応拡散系による近似がなされてきたが、これによっって、走化性のような移流項をもつ方程式に対しても反応拡散系によって近似できることを示唆した。さらにはこれによってミクロモデルの導出が可能になると考えられる。そのため、大腸菌1個体のようなミクロな振る舞いからと大腸菌群が作り出すマクロなコロニーパターンとの関係性解明に大きく近づくものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
移流項を持つような方程式に対して、それを反応拡散系で近似できたことが一つの大きな収穫である。それによってミクロな振る舞いを記述するミクロモデルを構築できる可能性がある。さらにはその近似によって移流項を持つような方程式に対して、別の視点から解の性質が分かる可能性が出てきたので研究が進展すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の知見に基づき、次年度はマクロモデルからミクロモデルを導出することが目標となる。そのミクロな振る舞いからマクロなパターンがどのようにして生成されるのかということを解明する予定である。ミクロモデルを計算機でシミュレーションすることによって再現されるパターンやその形成過程の性質とマクロモデルでのパターンや形成過程とを比較し、整合性を評価することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張を控えたため、繰越が生じた。研究推進のための研究議論として海外や国内への旅費として利用する予定である。
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