研究課題
我々は、太陽、水、耕地を利用し、循環する自然を巧みに使いながら持続的に再生する食料生産を行ってきた。このような食料循環の中で、原虫感染症はウイルス、細菌感染症等とともに、動物由来の食料の生産性を著しく低下させてきた。昨今のBSE、鳥インフルエンザ、口蹄疫による国際的な問題の露見と我が国における畜産業の甚大な被害を鑑みるに、感染症による食料生産の低下、すなわち食料循環の遮断は、畜産動物への直接的な感染による生産効率の低下だけではなく、風評被害による食料流通の停滞や国際的な食料安全保障の問題等にまで影響を及ぼす。本研究では、食料循環の観点から畜産動物に由来する食肉の食料生産を阻害する原虫感染症に焦点を当て、北海道を含めた我が国の畜産現場及び国外のフィールドにおける分子生物学及び病理学的疫学解析、動物モデルによる感染実験、原虫共生ウイルスによる原虫感染地域の同定、原虫感染診断系、実験室でのin vitro培養系の確立を行うことにより、食物に関わる家畜及び野生動物、微生物の生命活動の研究と、それを育む自然環境を長時間軸での物質循環システムとして捉えなおす農林水産生態の解析を行うことを目的とする。本年度は、国内外のフィールドのウシ及びコウモリ等の野生動物の糞便サンプルからDNAを抽出し、コクシジウムであるアイメリア及びクリプトスポリジウムのSSU rRNA及びActin遺伝子を増幅させるプライマーセットを用いてクローニングを行い、虫体の種判別を行い、系統樹を作製した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、国内外のフィールドのウシ及びコウモリ等の野生動物の糞便サンプルからDNAを抽出し、コクシジウムであるアイメリア及びクリプトスポリジウムの虫体の種判別を行い、系統樹を作製した。以上のことから、今年度の研究計画はおおむね順調に進展している。
原虫に共生するウイルスの分子疫学解析を行う。これによって、宿主の原虫感染地域の同定と原虫感染診断系の確立を目指す。さらに、本年度に得られた分子疫学解析の結果を発展させ、病理学的疫学解析を行う。また、感染動物モデル実験による病原性の解析、実験室でのin vitro培養系の確立を目指す。
本年度行ったクリプトスポリジウム、アイメリアの分子疫学解析の結果、以降の研究の指標とするため、各々の原虫ゲノムのPACライブラリーを作出し、次世代シークエンサーを用いて、原虫のリファレンスゲノム配列の完全決定を行う必要が生じたため。
物品費として、分子生物学的および遺伝子工学試薬として、PCR酵素、オリゴDNA, RNAを見積もった。各年度とも、原虫の培養には培地を必要とするため、培地・培養器具類を中心に見積もった。実験動物の購入及び飼育用経費を見積もった。旅費として、日本獣医学会、日本寄生虫学会での成果発表を予定して見積もった。人件費・謝金として、技術補佐員の人件費を見積もった。その他として、国内外における成果発表及び論文投稿に関わる経費として、英文校閲費、論文掲載費、論文作製に関わる諸経費(通信費、複写費、会議費)を計上した。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) 図書 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件)
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