研究課題/領域番号 |
16KT0142
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿部 敬悦 東北大学, 農学研究科, 教授 (50312624)
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研究分担者 |
高橋 英樹 東北大学, 農学研究科, 教授 (20197164)
矢部 修平 東北大学, 農学研究科, 准教授 (60564838)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | コンポスト / 植物病害 / 生物農薬 |
研究実績の概要 |
本課題を達成するためには、実用大規模コンポスト化施設を用いて、安定的に植物病害菌防除機能を有する投入原料配合や発酵ステージを特定する事が極めて重要である。今年度は、ターゲットとする植物病原菌として日本各地で感染が報告されているイネ苗立枯細菌病細菌Burkholderia plantariiを選定し、実用大規模スクープ式コンポスト化施設(投入原料別に7レーン)を用いて生産されたコンポストによる病害抑制効果の評価を行った。供試サンプルとして投入主原料が異なる7条件、即ち牛糞と副資材(籾殻やバークなど)で配合比が異なる①~③、牛糞・下水汚泥・副資材の②、牛糞・豚糞・鶏糞の③、鶏糞の④、食品残渣・汚泥の⑤、漁業廃棄物・副資材の⑥をそれぞれコンポスト化したものを用いた。B. plantariiを感染させた罹病種子と健全種子を用い各種コンポスト (5%または10% [w/w]) 添加栽培試験を行い、発病度の違いから各コンポストの病害抑制効果を調べた。その結果、投入原料条件①においてのみ顕著で安定的な病害抑制効果が認められた。一方、同じ牛糞・副資材を主原料とする②、③においては明確な効果が認められなかった。また、健全種子においても施肥過多と考えられる発育阻害が見られたものもあった。次にこの防除機能を有したレーンを用いて、発酵ステージ別に同様の試験を行った。その結果、発酵後期の防除効果が最も高い結果となった。他方、これらコンポストから分離した乳酸菌27株、放線菌11株、その他の細菌232株の本被験菌に対するagar diffusion testを行った結果、明確な阻止円を形成する単離株を見出す事はできなかった。 以上の成果によって、牛糞と副資材の混合比率の違いよって防除機能を有するものとそうでないものが存在する事が明かとなった。それらの比較解析することで本課題の解決につながる事が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
供試コンポスト及び植物病害防除試験の実施体制が予定より早期に整ったため、29年度に予定していた実用大規模コンポスト化施設により生産された原料別、発酵ステージ別のコンポストを用いた防除効果の検証を前倒しで実施し、概ね目的を達成した。次に本年度計画していた植物病原菌生育抑制株の探索は、コンポストからの乳酸菌、放線菌を含む細菌270株を分離し、B. plantariiに対して生育阻止活性を示す単離株の探索は実施したが、明確な活性を示す株を見出すことができなかった。このため、現時点では防除効果が微生物に起因するのか不明なため、本年度予定していた各種コンポストの次世代シークエンサー(NGS)による微生物叢解析は未実施である。
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今後の研究の推進方策 |
同じ実用規模コンポスト化施設を用いて生産したコンポストにおいて、投入原料やその混合比率の違いでイネ苗立枯細菌病細菌に対する防除効果に大きな違いがあり、牛糞と副資材を主原料とする条件①で生産されたコンポストは安定的で強い防除効果を示すことが明らかとなった。今後は強い効果を生じさせた要因を特定し、その他の原料や比率で何故効果が無かったのかなどを明かにすることが優先課題である。それは防除機能コンポストを安定的に製造する技術を確立させるための重要な基礎データとなる。 その課題を達成するための対応策として、防除要因は、コンポスト中の微生物の影響、発酵中に生産された有機化合物の影響、ミネラルの影響、コンポスト成分によって抵抗性を高めたのか(抵抗性誘導)、または複合的な要因なのかなどを検証する予定である。 また、平成28年度は防除機能を有する単離株を見出す事が出来なかったため、引き続き同様のagar diffusion testは実施する。他方、改善策として防除機能を有する複合微生物も探索する。即ち、防除機能が認められたコンポストを様々な条件で集積させた複合培養物を供試サンプルとしたポット栽培試験を行い、防除機能を有するものを探索し、そこから段階希釈したものの試験結果から、防除機能を示す最小微生物群を特定する。複合微生物によるイネ苗立枯細菌病細菌の防除作用は報告されておらず、安定的な防除結果が得られた場合の学術的意義は大きい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が概ね順調に進んだこともあって、消耗品で少額の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の微生物同定試験などの試薬購入費として使用する。
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