研究課題
本研究は、植物病害防除能が強い菌叢の優占率制御を可能とするコンポスト化技術の確立に向けた基礎的知見と新奇微生物農薬候補株の獲得を目的とした。平成29年度までに実用大規模コンポスト化施設を用い、各種投入原料別に製造したコンポストの稲籾枯細菌病防除効果をin planta試験で調べたところ牛糞由来のものが最も高い防除効果を示した。しかし、そこから分離した細菌232株に当該病害菌Burkholderia glumaeに対する抗菌活性(in vitro)は認められなかった。平成30年度は分離株のQuorum quenching(QQ)活性をChromobacterium violaceumをバイオセンサーとして調べたところ11株に活性が認められ、内5株はin planta試験で強い防除効果を示した。系統解析の結果、1株はChryseobacterium属の新種と推定された。そのゲノムを解読したところ推定サイズは5.4Mb、GC含量は36.9%、CDSは4761個でありQQに関与するN-Acylhomoserine lactonase(AidC)遺伝子が検出され、その他siderophoreなど病害防除に関与する二次代謝物生合成遺伝子群が合計14個と多数検出された。この近縁種についても同様に調べたところ共通して高い防除効果を示し、さらに同様の遺伝子群を有したため、本系統全体が微生物農薬候補と成り得ると推察された。コンポスト化過程の菌叢をMiseqで解析したところ、本属は0.04~0.57%とマイナーな菌群であることが判明した。ところが、分離源コンポストをR2A液体培地に添加し、30℃で7日間培養した集積菌群の菌叢は、本属が67.3%と圧倒的に優占することが明かとなった。優占に導いた要因のさらなる解析が必要であるが、本系統は優占率を制御できることが強く示唆された。
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Journal of Phytopathology
巻: 166 ページ: 249 264
DOI: 10.1111/jph.12682