研究課題/領域番号 |
16KT0146
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安藤 晃規 京都大学, 農学研究科, 助教 (10537765)
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研究分担者 |
高橋 里美 京都大学, 農学研究科, 寄附講座教員 (60637487) [辞退]
小川 順 京都大学, 農学研究科, 教授 (70281102)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | 硝化反応 / 硝化菌 / アンモニア酸化菌 / 亜硝酸酸化菌 / 有機質肥料活用型栽培 |
研究実績の概要 |
有機質肥料活用型栽培は、これまでの水耕栽培と異なり、直接栽培系に有機物を施肥でき、資源循環型水耕栽培の実現が期待される新しい栽培法である。本栽培法は、有機物の無機化を行う硝化工程と栽培工程で構成される。我々は、この硝化工程における窒素動態と菌叢推移をDGGE解析により明らかにし、従属栄養細菌による有機物の分解、引き続くアンモニア酸化、亜硝酸酸化に関わる大きく3種類の菌群の機能で耕水工程が成り立っていることを示した。この知見に基づき、従属栄養細菌であるBacillus badius NBRC 15713と硝化菌の3菌系にて、有機物の効率的な硝化を実現した。本菌による硝化検討により、変換効率約60%以上で、効率的に有機物を硝酸へ変換できることを明らかにした。さらにこれまで硝化が可能な有機物濃度は2g/Lが上限であったが、新たに単離した従属栄養細菌Delftia tsuruhatensisを活用し、3菌系硝化反応を行うことで、10g/L(fish soluble)の高濃度有機物条件下においても硝化が可能であることを明らかにした。 また、既存の硝化菌を活用し、コロニーの肥大化の条件の精査を行った。その結果、培地固化基剤、培地量、培地組成、微量元素、菌体塗布量、温度、湿度、二酸化炭素濃度など最適な条件下で培養することで、釣菌に必要なコロニーの肥大化の時間を一ヶ月から2週間に短縮することに成功した。同時に硝化菌の安定した継代培養法を確立し、硝化菌の生残性の正確な評価が可能の条件が整った。これにより、新たな硝化菌の単離に必要な、コロニーの肥大化の条件、長期保存法の開発への端緒を得た。また、これまでに硝化が困難であった高温域の硝化菌(40℃)、低温域(10℃)の硝化菌の集積培養に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、市販のアンモニア酸化菌Nitrosomonas europaea NBRC 14298と亜硝酸酸化菌Nitrobacter winogradskyi NBRC 14297を活用し、効率的硝化を実現する従属栄養細菌のスクリーングを行ったところ、従属栄養細菌であるBacillus badius NBRC 15713や自然界よりDelftia tsuruhatensisを見いだし、3菌のみにて有機物の効率的な硝化(無機化)を実現した。また、硝化菌の培養条件を精査することで、釣菌に必要なコロニーの肥大化の時間を一ヶ月から2週間に短縮することに成功した。同時に硝化菌の安定した継代培養法を確立し、硝化菌の生残性の正確な評価が可能の条件が整った。これにより、新たな硝化菌の単離に必要な、コロニー形成、長期保存法の開発への端緒を得た。また、これまでに硝化が困難であった高温域の硝化菌(40℃)、低温域(10℃)の硝化菌の集積培養に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
・これまでに硝化菌の有効な保存法は確率していない、そこで、簡便な凍結保存、凍結乾燥保存、L乾燥保存等の検討を行う。 ・現場での持続的な供給が期待できる未利用有機物は、鰹の煮汁、缶詰工場から出る魚の内臓、ホタテのウロ、CSL、焼酎絞りかす、油絞りかす、嫌気消化残渣などが想定される。先の検討で選抜したアンモニア酸化菌、亜硝酸酸化菌、従属栄養細菌等を活用し、効率的な硝化反応を実現する組み合わせをデザインする。 ・現場の開放系では、微生物の混入により硝化反応が阻害される可能性がある。特に、培養初期の有機物の分解過程では、他の従属栄養細菌の混入の可能性が高い。そこで、酸性条件下での生もと造りの際の菌叢の推移や、アルカリ条件下で複雑な菌叢をコントロールしている発酵藍を参考に、pHの環境制御により、有機物の分解と硝化反応を行う硝化反応の制御を試みる。 ・モデルとなる基本硝化微生物群を用いた硝化反応を行い、タバコ等のモデル植物や実栽培作物による栽培評価を行う。その際、施肥効率や、安定性などを基準に生物的ニッチを埋める従属栄養細菌、真核微生物などの組み合わせ効果を検証し、様々な用途に適した高硝化複合微生物剤のデザインを行う。その後、実際に開放系での栽培系に適用し、葉菜類、果菜類などの実証試験を行う。
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