研究実績の概要 |
本研究の目的は、サツマイモの重要病害や有害線虫が土壌微生物相に及ぼす影響を経時的かつ網羅的に調査することである。対象はサツマイモ立枯病とサツマイモネコブセンチュウとする。これらはサツマイモの収量や外観品質に大きな影響を及ぼすが、抵抗性品種は極めて限られている。また、有害線虫および土壌病害の発生・抑制には土壌微生物相が大きく影響することが示唆されているが、科学的な知見は少ない。そこで本研究では、立枯病とネコブセンチュウ発病・非発病土壌サンプルを用い、微生物構成を明らかにする目的で16Sメタゲノム解析を行った。 ネコブセンチュウ発病圃場(茨城県つくば市)と隣接する非発病圃場、立枯病発病圃場(徳島県名西郡)とクロルピクリンで土壌消毒を行い立枯病の発生を抑制した非発病圃場から、それぞれ土壌試料のサンプリングを行った。土壌サンプルからDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子のV1-V2とV3-V4領域を増幅するよう設計したPCRプライマーを用いMiSeqシーケンス用ライブラリーを作成した。シーケンスの結果、V1-V2については合計13,132,254ペアリード、V3-V4については合計20,744,156ペアリードを得た。16Sメタゲノム解析専用ソフトウェアQIIMEにより、微生物構成の比較ならびに多様性解析等を行った。その結果、異なる試験区間ではその土壌中の微生物構成に違いが見られた一方、試験区内の土壌試料における微生物構成は類似していた。また、どちらの検定土壌でも発病土壌では非発病土壌よりも微生物の多様性が減少していることが示された。また、同じ病害に感染していても砂質や粘土質など土壌の特性、あるいはマルチ被覆の有無などによって微生物の多様性やその構成は大きく異なっていた。以上のことから、土壌の微生物構成は病害感染の有無だけでなく、様々な環境要因に影響を受けることが示唆された。
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