研究課題
①試料採取:前年度に瀬戸内海で採取された海水、堆積物、プランクトン、魚類の冷凍・冷蔵試料を化学分析に用いた。また本年度、瀬戸内海から採取された魚類や貝類は、漁師から購入・譲渡などの提供を受けた。広島県東広島市において、黒瀬川河川の底泥付着藻類を採取した。②農薬の測定:海水、堆積物、プランクトン、生物試料中の8種類の農薬の測定をおこなった。ダイアジノン(有機リン系殺虫剤)がすべての試料において、比較的高濃度で存在することを明らかにした。生物試料中の農薬濃度の測定から、食用魚等の食品としての安全性を、日本、米国、欧州の食品残留最大基準値をもとに評価を行った。本研究の測定データおよび文献値をもとに、瀬戸内海における海洋生物への農薬のリスクアセスメントを実施した。また、黒瀬川における河川水農薬濃度、付着藻類中の農薬濃度データを用いて、水生生物へのリスクアセスメントを実施し、有機リン系殺虫剤であるダイアジノンが予測無影響濃度(PNEC)を超えていることを明らかにした。③農薬の物質収支、リスクアセスメント:瀬戸内海の海水、堆積物、プランクトン、海洋生物の農薬濃度、河川水や降雨中濃度、各府県の農地等での農薬使用量、船底塗料の出荷量や防汚剤の含有量、船舶航行数などの観測、実験、行政データを入手し、過去20年間の農薬の物質収支の変遷に関して解析を行った。また、海域による農薬汚染の進行度の評価を行い、瀬戸内海全域にわたる汚染の分布を明らかにすることを試みた。その結果、ダイアジノンの陸地での使用量が過去数十年間減少傾向にあり、海水中濃度も減少することが予測された。船底防汚剤であるジウロン、イルガロール1051の使用量は1990年代が最大であり、2000年代以降減少傾向にあるので、海水中濃度も今後減少することが推定された。得られた研究成果は、国際学術誌に4報出版し、国内学会で1回発表し、公表した。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (1件)
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