農薬や化学肥料・有機肥料も一切使用しない自然栽培法による水田の窒素収支を明らかにするため,約1反の水田で自然栽培を行い,灌漑期の水収支と窒素収支の観測を行った。その結果,深度60cmの土壌水の硝酸性窒素濃度は低く,地下水への窒素負荷量は非常に小さいことが明らかとなった。また,水田土壌と生育したイネの窒素安定同位体比はどちらも+10‰であり,イネの窒素起源は土壌の有機物であると推定できた。 そこで,熊本地域の水田をすべて自然栽培にしたと仮定して地下水モデルで解析した結果,水田付近の井戸では数年以内に,下流域の井戸でも20年以内に,地下水の硝酸性窒素濃度は低下することが推定できた。
|